MBAのエッセンスを独学で学ぶカリキュラムをシリーズで紹介していますが、今回は、実際の企業のケーススタディを読み解く、最後の記事です。
今回の参考図書は、IEビジネススクールと一橋ビジネススクールの両教授が編纂した、グローバル化とその中でビジネスが果たす役割についての15のケースが収録された本です。
ここからは、自分のメモの要素が強くなりますが、大事だと思うこと、キーワードを中心に記していきます。引用部分は『』で表します。15ケースは長いので、3ケースごとに5つの記事に分けます。
Huawei:国際化とコアバリュー
今回の企業は中国の通信機器メーカーHuaweiです。現在は超巨大企業ですが、1987年に深圳で創業したHuaweiの国際的な拡大には数々の困難があり、「コアバリュー」と「国際化のプロセス」の2つが大きな役割を果たしました。
Huaweiのコアバリューは3つです。『Staying customer-centric』、『Inspiring dedication』、『Perseveranve』。これらをどの企業よりも徹底してやっており、時には自分の利益や犠牲を払ってでも顧客を第一に考える姿勢があります。忍耐力も相当なもので、新たに進出した国では、Break-evenまで10年以上かかってもあきらめません(中国での安定利益が支えている)。
Huaweiの国際化は、『Local immersion』(徹底した現地化、71%の従業員がローカル)、『From Periphery to Core』(新興国で実績を作って先進国に広める)、『Intensive Customer-Driven R&D』(売上の10%以上はR&Dに使うというルール。短期的はどんなに苦しくても絶対守る)のような姿勢で進んで行きました。
最後に、Huaweiのビジネスは、BtoBからスマホなどのBtoCにシフトしており、より短期間での開発サイクルが課題だと述べられる。
Barry-Wehmiller:Truly Human Leadership
次は米国のBarry-Wehmillerです。祖業は殺菌やボトルの洗浄をビール産業でやっていたようですが、今はパッケージ、コンバーティング、ITコンサルなど幅広い事業をやっている、売上2.4Bドルの巨大企業です。
タイトルの『Truly Human Leadership』にもあるように、成功は利益ではなく関わった人々へのインパクトの大きさで決まる!というような、人に優しい会社です。現在のCEOは会計士でかつMBAでManagementを学び、当初はいわゆる利益中心主義でしたが、自身の子育てや様々な経験を通じて、現在の経営スタイルに変わっていきました。その中身を見ていきます。
まず、ManagementとLeadershipを明確に分けています。Managementは人々をManipulateするもの、それに対してLeadershipは自分を信頼してくれる人々に対する責任であり行動規範と定義している。
Barry-Wehmillerの文化は、『People, Purpose and Performance』であり、Leadershipを持って周囲の人々をInspireし、人間のPotentialを信じ、共に価値を生み出していこう、とざっくり理解しました(汗)。
こうした、人間を中心とした働きやすい会社というのはどこも言っていますが、この会社は徹底的にやっているので、具体例として参考になりました。
Haier:新興国の会社が先進国の会社を買収したあとのPMIについて
次は中国の電機メーカーHaierがテーマです。この会社はM&Aが上手な会社ですが、その秘訣に迫っていきます。まず、外国企業がその国の会社を買収した際には、「支配の正当性」が問われます。これは古代からの侵略者の共通の悩みですね。それに加えて、新興国の会社が先進国の会社を買収した際には、「Originの正当性」が問われます。例えば戦国時代で、出自の正当性が問われるようなものですね(直系かどうかなど)。
HaierのM&Aの方針は明快で、リソースや製品はGoodだが、Poor Managementの会社を買うというものです。その中でも大企業病の会社が大半です。日本のSANYOなどはまさに典型でした。
Haierは買収後、『Individual-Goal Combination』と呼ばれる評価システムを導入し、個人の成果がボーナスに紐づくようにし、最終的には個人が自分のゴールを自分で設定し、勝手に動いていく主体的な文化を築こうとします。また、会社をStrategy Business Unitという単位に分割し、各ユニットの自主的な経営を実現します。
最後に、新興国の会社が先進国の会社を買収した際に、「Originの正当性」に悩む必要はないと述べられます。なぜなら、新興国の買収ができるような会社は、既に激しい競争に勝ち抜いており、そのやり方が十分有効であることが証明されているからである。またHaierは、知らない会社を買収することはせず、提携などを通じ、時間をかけてその会社を知ることから始めます。最も重要なのは、オープンなコミュニケーションであり、買収者と被買収者がタッグを組んで新しいビジネスモデルや製品を作り上げることである、と述べられてこの本は終わります。
5/5のまとめ
ふとしたことから手にした本でしたが、15章を14日で読破しました。仕事の合間だったので毎日読めず、大体1日2〜3章のペースでしたが、1章30分で読み、30分でブログにまとめるところまでスピードが上がりました。ビジネススクールは1日何ケースも読み、授業でディスカッションして、グループワークもあるとのことなので、ハードさが想像できました。
色々な企業の国際化(Internationalization)を見ました。グローバル化の変化に負けず、素早く変化に適応する企業が生き残るという、当たり前の結論となりましたが、その中でも、各企業のやり方、DNAがあり、そうした独自性を活かしてどの企業も努力していることを感じました。各ケースも体系立てて理論的に述べられているので、自分の仕事に活かせる部分は活かしていこうと思います。
ケースの読み方について、解説した記事はこちら