今回のテーマは世界史。グローバルな環境で働いたり、学んだりするときは、世界史の概要くらいは押さえておかないとマズいですよね。一方で世界史は複雑でわかりにくいのも事実。こんな悩みを持つ方のために、大学で歴史を専攻し、地歴公民の教員免許を持つ私が、世界史を1枚のフレームワークにまとめてみました。
同じ内容を動画にしていますので、動画で見たい方はこちらから
はじめに
大学で歴史を専攻していたと話すと、結構聞かれるのが、「世界史は難しい/よくわからない」、「世界史は仕事や日常で役に立つのですか?」という問いです。
それに対する答えは、自分の頭で考えて理解できれば難しくないし、仕事や留学で役立つと言えます。但し、理解のためには下記の3点が必要だと私は思います。
- 世界史は「人間の」歴史。
- 「人間の」行動に対して、Why so? So what?と問いかけることで、単なる出来事の記憶ではなく、自分なりに意味付けをして理解すること
- 頭の中に世界史のフレームワークが入っていること
1〜2については、クリティカルシンキングに近いものがあり、既にビジネスで使われていると思うので、今回は3番目のフレームワークを紹介させてください。
フレームワーク思考
ビジネスの世界にはたくさんのフレームワークがあります。3C、4P、空雨傘など。
誰でも容易に理解することができ、モレなくダブりなくポイントを押さえることができるフレームワークはとても便利な物なのに、世界史に関しては良いものに巡り合いませんでした
しかし、世界史を勉強して20年、ついに最強のフレームワークに巡り会いました。この本のフレームワークを使えば世界史は一瞬で理解できます。
しかし!本書は高校生向けの本で、忙しいビジネスパーソンにはもっと簡潔で、極限までポイントを絞り込んだ使いやすいフレームワークが必要です。そこで本書を噛み砕き、改良版フレームワークを作成しました。
世界史フレームワーク概要
フレームワークを図にしましたが、ポイントは3点。
・世界の歴史は、図の上下、すなわち前半と後半に分かれる(15〜16世紀頃を境に)。
・前半は、4つの地域(①欧州、②中東、③インド、④中国)が併存 & 一体化の開始(⑤)
・後半は、4つの地域が本格的に一体化(⑥〜⑨)& 現代の世界(⑩)
ちなみに、上記の番号⓪〜⑩は、参考書籍の序章、序章〜10章の章立てに完全に一致するので、本記事を読んだ後に、参考書籍を読むのが一番です!
●目次
出典:公立高校教師YouTuberが書いた 一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書(山﨑圭一著)
はじめに 世界史には“1つ”のストーリーがある!
ホームルーム1 「わかりにくい」という世界史の教科書の“弊害”
ホームルーム2 世界史は数珠つなぎにして学べ!
ホームルーム3 世界史は「年号」を使わずに学べ!
序章 人類の出現・文明の誕生
1章 ヨーロッパの歴史
2章 中東の歴史
3章 インドの歴史
4章 中国の歴史
5章 一体化する世界の時代
6章 革命の時代
7章 帝国主義と世界大戦の時代
8章 近代の中東・インド
9章 近代の中国
10章 現代の世界
⓪人類の出現・文明の誕生
本格的に世界史に入る前に、ちょっとだけ人類の起源について紹介します。
最古の人類は、「直立二足歩行」、「簡単な道具」などを使用する「猿人」で、約400〜250万年前のアウストラロピテクスが代表的です。
とはいえシンプルに、最古の人類が数百万年前のアフリカで起こり、その後各地に広がっていった、とだけ覚えてください。
例:北京まで到達したのが北京原人、ジャワに到達したのがジャワ原人
そして、農耕による生産性の向上ともに大河のほとりに文明ができていきます(例:エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明)。これが世界(の人間の歴)史のはじまりです。
①(前半)ヨーロッパの歴史
特徴:多様と統一
ポイント
・基本的には、(前半の)欧州の歴史≒ローマの歴史。欧州はローマで使用されたアルファベット、キリスト教など共通の基盤を持つ。
・ローマ前:ローマ文化の源流はギリシア。アルファベットはギリシアの発明。
・ローマ後:ローマは東西に分裂し、西ローマは現在のドイツ、フランス、イタリアの原型。東ローマは現在のイスタンブールに首都があった。
欧州≒ローマ、その前後(ギリシアと東西分裂)を押さえれば前半の欧州はOK です。
②(前半)中東の歴史
特徴:多種多様な遊牧民を束ねる巨大な帝国
*帝国とは…自国の国境を越えて多数・広大な領土や民族を強大な軍事力を背景に支配する国家(スターウォーズの悪の帝国もそうですね)
ポイント
・ペルシア帝国→イスラム教誕生→オスマン帝国
前半の中東はペルシアからのイスラム!とだけ覚えておけばOKです。
③(前半)インドの歴史
特徴:多様な風土を背景にした、カオスな歴史
ポイント
・カオスなため多種多様な王朝ができたが、前半の最後にできたのがムガル帝国(写真は、ムガル皇帝の王妃の墓=タージマハール)
色々あって最後にムガルとだけ覚えておけばOKです。
④(前半)中国の歴史
特徴:王様の性格・やり方が統治に現れる(ので面白い)
*身近な例:会社や組織のトップの資質・考えによって、会社の雰囲気や戦略が全然違う。これは今でもそうです。
ポイント
・色々な王朝(色々→キングダム→色々→ラストエンペラー)
キングダムは漫画ですが、主人公の一人である秦の始皇帝(政)がどういう人物で、どういうやり方で広い国土を統治しようとしたのかを考えると面白いです(もちろん多くの将軍が活躍する戦いの描写が最高に面白いのですが)。
たくさんの王朝がありますが、キングダム(「秦」の始皇帝)とラストエンペラー(中国最後の王朝「清」の最後の皇帝溥儀)という2つのシンを押さえておけばOKです。
⑤一体化する世界の時代
さて、前半のクライマックスに「世界の一体化」をもたらす重要な出来事が、欧州で3つ起きました。3つです。
・大航海時代
・宗教改革
・ルネッサンス
上記の3つを私の方で現代風に言い換えてみます。
・海外展開(コロンブスがスペイン女王に新規開拓をプレゼン)
・コンプライアンス違反の是正(腐敗した教会)
・創業者が芸術に目覚めて大金を使う(フィレンツェの貴族)
現在に置き換えると、3つの出来事はどれも世界の一体化をもたらすものですね。海外展開はもちろん、コンプライアンスと芸術には国境は関係ないですからね。
とりあえず、3つのできごとでバラバラだった4つの地域が、15〜16世紀頃に一体化し始めたと覚えてください。
おわりに(後編に向けて)
さて、前半は4つの地域史の併存と世界の一体化の始まりでした。後半は世界の一体化が本格化する様子をまとめたいと思います。