IEに入学し、6ヶ月間のCore Period(必修)、5週間のLab Periodを終えると、残りは3ヶ月のElective Periodに突入します。100以上の選択肢から、自分の学びたい科目を取ることができます。
今回は、私が選んだ8つの中でも最も実践的な部類に入る「HANDS ON E-COMMERCE AND DIGITAL STRATEGY」の授業内容を詳しく紹介します。
以上の内容を、実際に授業を受けた私が詳しく説明していきます。
カリキュラム概要
教授自身が、この科目はレクチャーではなく、教室の外をメインで学んでほしいと明言しているように、実践が重視されています。20回の授業を通じて必要な知識は教えてもらえますが、最終的に2つのアウトプットを出すのがゴールです。
- 個人課題(ECサイトを作る)
- グループ課題(GoogleのOnline Marketing Challenge)
どちらも重たい内容なのですが、順番に説明していきます。
1. 個人課題(ECサイト)
ECサイトを作って、実際に「製品を売る」のがゴールです。さすがに「自分たちで作る or 仕入れて売る」のはハードルが高いため、「ドロップシッピング」を利用しますが、実際のECサイトと何ら変わりはありません。また、「Shopify」や「BASE」と言ったECプラットフォームではなく、「WordPress」を使った本格的なWebサイトを作るのが特徴です。
商品の在庫や仕入れなしに消費者から注文を受け、メーカーやドロップシッピング専門事業者から直接顧客に商品を発送する形で運営されているインターネット上のショップ形態(ドロップシップとは「産地直送」という意味)。
ドロップシッピング とは 意味/解説/説明 【drop shipping】
それでは、ECサイト作り方と学んだ内容を、順番に見ていきましょう。
①リサーチ
まずはアイディアを出すために調査をしていきます。ブレストでアイディアを出してから、3C(市場、競合、自社)の観点から選択肢を絞り込んでいきます。
- General Market Research(マクロ環境)
- Keyword Research(キーワード選定)
- Trend Research(トレンド)
- Content Research(どんなコンテンツが人気か)
- Audience Research(顧客調査)
- Competition Research(競合ECサイト調査)
ニッチを狙うのが基本的な戦略になります。Idea Varificationのフェーズですね。
②顧客ニーズとプロダクト、バリュープロポジション
ニッチな市場を探すと同時に、「カスタマーの具体化」と「Problem探索」を進めていきましょう。
ターゲットカスタマーについては、「ペルソナ」として具体的にイメージすることが大切です。実際にその人物が実在しているかのように、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、特技、価値観、家族構成、生い立ち、休日の過ごし方、ライフスタイル、悩みと言った、具体的な顧客像を設定していきます。
ペルソナを元に、顧客が抱える課題(Ploblem)の仮説を出し、インタビューやアンケートを通じてProblemが本当に存在するのか、どのように顧客が解決したいのか(Solution)を出していきます。
今回のテーマはECサイトなので、Solutionは「オンラインでのプロダクト販売」になりますね。顧客の課題を解決するためのプロダクトを選定します。ドロップシッピングサイトのカタログから、製品を選びましょう。
この際に、「<製品名>は、<主張の根拠>によって、 <ターゲット顧客>に <コアとなるベネフィット>を提供します」というバリュープロポジション(顧客に提供する価値)が完成するように考えてみましょう。
これは「Cutomer-Problem Fit」と「Problem-Solution Fit」のフェーズになります。
③戦略策定と計画
プロダクトまで見えてきたら、一度立ち止まってビジネスモデルとマーケティング戦略を考えてみましょう。「The Digital Marketing Canvas」というテンプレートを埋めることで、自然と戦略が完成することになります。
④ECサイトの公開
プロダクトを選定したら、ECサイトを立ち上げ、実際に販売しながらトライアル&エラーを繰り返しましょう。起業であれば、このフェーズでプロトタイプやMVPを作って市場にニーズがあるか確かめていくことになりますが、ECサイトでかつドロップシッピングの場合は、ECサイトを作って売れるかどうか確かめることができます。
ドロップシッピングは仕入れも在庫もないので、ほぼゼロコストノーリスクで、色々な製品を試していくことができますね。
Shopifyであればサイト作成は1日もかからないと思いますし、Wordpressも数日〜1週間くらい集中すれば終わると思います。
いわゆるPMF(Product-Market Fit)と呼ばれるフェーズですね。
⑤デジタルマーケティング
顧客をECサイトに誘導し、購入してもらう「売れる仕組み」を作っていきましょう。デジタルマーケティングでは、SEO/アクセス解析/デジタル広告/SNSなどのツールを活用して進めていきます。
Facebook広告を自腹でトライするのが、課題の一つでした。
*こちらの記事に詳しくまとめています。
⑥売上拡大へ
ECサイトを立ち上げるのはゴールではなくスタートです。場合によっては、①リサーチ〜⑤デジタルマーケティングまで何度も繰り返しながら、売上拡大を目指しましょう。
2. グループ課題(Online Marketing Challenge)
これは、1ヶ月間で1万ドルを使って実在のNGOのオンラインマーケティングをするという実践的な内容です。1万ドルはGoogleが費用を負担してくれます。
オンラインマーケティングチャレンジは、Google Ad Grantsプログラムを通じて現物Google広告広告クレジットの月額$ 10,000 USDの予算を使用して、学生が実際の非営利団体向けのオンラインマーケティングキャンペーンを作成および実行する実際の経験を得るユニークな機会です。このグローバルアカデミックプログラムは、学生と非営利団体のパートナーである2つの世界を結びつけて、デジタルスキルの開発をサポートし、世界中で前向きな変化を推進します。
https://get.google.com/onlinechallenge/
①Eラーニングとマッチング
いきなりプロジェクトを進めることはできないので、Google広告に関する2つのEラーニングのコース(アクセス解析と検索)を修了する必要があります。Google広告を運用するための基礎的な知識が身につくので、興味があればトライしてみてください。
試験に合格すると、パートナーとなるNGOとマッチングします。NGOの所在国と業界を選ぶことができ、我々はアフリカで医療サポートをしているNGOとマッチングしました。
②ヒアリングと戦略策定
NGOとミーティングをし、彼らの課題や今回のプロジェクトの目標設定をします。彼らの課題は、データ分析やSNS運用、Webサイトの運用に難があったため、解決策の提案を一つ目の目標にしました。また彼らのニーズとしては、認知拡大、ボランティア募集、寄付を募りたいという希望があったので、Google広告による認知拡大を二つ目の目標にしました。
ヒアリングを元にデジタルマーケティング戦略を立案し、NGOの承認を得た後にGoogleに提出しました。
③実行フェーズ
Google広告を1ヶ月間運用していきます。ターゲットや予算を決めて、ディスプレイ広告、リスティング広告、テキスト広告などを開始します。広告の作成方法やデータ分析を含めて、実践で学ぶことができました。
④振り返り
1ヶ月のキャンペーンを経て、報告書を作成します。こちらもNGOとのミーティングを経て、Googleに提出して完了です。
おわりに
ECサイトの作成、Googleマーケティングチャレンジの両方とも、実践の中で多くのことを学ぶことができました。どちらも一度経験することが何より大事だと思うので、この授業を選んで良かったです。
学びは多かったですが、3ヶ月間、計20回の授業に加え、大量のミーティングと途方もない作業が発生したので、相当な負荷でしたね。