MBA留学を目指している方や、将来グローバルにキャリアを築きたいと思っている方、以下のような悩みをお持ちではないでしょうか?
- MBAスクールの起業プログラムで教えられる内容を知りたい
- 起業アイデアから実際に起業に至るまでのプロセスを知りたい
- 将来もしくはMBA在学中に起業したいので、起業プログラムの体験談を聞きたい
今回は座談会企画の第2弾として、MBA経験者である、Sun(IEビジネススクールMBA @スペイン)とYusaku(UC San Diego MBA @アメリカ)が、上記の悩みについてお答えします!
この記事を読めば、MBAスクールで教えられる起業プログラムおよび授業内容が理解でき、起業に至るまでのプロセスが明確になります。
なぜなら、実際にアントレに強いMBAスクールランキング上位2校の経験者が、起業プログラムで学んだ体験を解説しているからです。
是非、本場のアントレプレナーシップが学べるビジネススクールの生きた情報を活かしてください!
イントロ
MBAで起業プログラムに参加したいという方は多いと思います。こうしたプログラムは、最初のアイディア出しからプロダクト開発、ビジネスプラン作成まで起業に必要な全てのトピックをカバーしてくれます。メンターや資金面も含め、実際に起業をしたい人には最高の環境を提供してくれます。
UC San Diegoの場合は、『Lab to Market』という目玉授業があり、1年目の冬にアイデア出しと起業に関する分析フレームワークやツールを学び、2年目の冬と春にマーケットインまでを目指す必修アントレの授業があります。総合大学の強みである強力なネットワークを活かし、研究機関・企業からのシーズを活用したり、商品化の機会に触れながら、独自のアイデアを生み出していきます。
IEは1年間のプログラムなのでもっとインテンシブです。入学後の半年間でアントレの基礎を必修でたたき込まれたあと、1ヶ月間のStartupLab(起業集中プログラム)、Electiveでも3ヶ月の起業プログラムが続きます。希望者は1年間アントレ漬けになりますね。在学中に起業、もしくは起業家ビザを獲得するのが目標です。
Step1:アイディア出し
必修のアントレの授業で、一番最初にやったことは起業家のマインドセットを知ることです。これは、正解のない未知の世界のどう立ち向かうのか?起業家とは?起業家に必要な資質とは?について学ぶことになります。こうした心構えを学びながら、起業アイディアを探していきます。
どうやってアイディアを探しましたか?
日本のスタートアップの米国展開プロジェクトをやったのですが、既に製品があったので、アイデア出しから始めたEコマース起業の話をしますね。まずはグループでブレストをしました。各自の興味ある分野、自分の困っていることから出発しましたね。メンバーの子供がZoomでうまくコミュニケーションを取れないという悩みがあり、深掘りしていきました。
私も自分の困っていた題材で考えました。留学前にMBAの内容を予習する時に、本や動画を読んでも、結局は表面をなぞっただけで十分理解ができていませんでした。実際留学に来て、ケースディスカッションやシミュレーションゲームなどを通じて腑に落ちた経験があり、その辺にヒントがあるのではと、仮説の深堀進めました。
このようにして、身近なところからブレストをしていき、アイディアの種(複数あるとよい)を考えていきます。
Step2:Problem&Solution、顧客に提供する価値
アイディアの種を見つけたら、問題の深堀をしていきます。問題を抱えていそうな人にインタビューやアンケートを繰り返し、本当に問題があるのか、インパクトのある問題なのかを見極めます。
私の場合は自分自身の困りごとなので考えやすかったです。同級生や知人に聞くと同じような問題を抱えていることがわかりました。
同じく子供連れの同級生などにインタビューしました。どうやら、大人のようにうまく画面シェアやチャット機能を使えないのがコミュニケーションを妨げているのではと仮説を立てました。
Problemがある程度見えたらSolutionですよね。私はMBAでもシミュレーションゲームの授業が一番楽しくて理解度が高かったので、これだ!と思って決めました。ちょうどロックダウンの期間だったので、オンライン縛りにしました。
私達は、Zoomなどのビデオ電話で使えるようなミニホワイトボードを候補にしました。Eコマースの授業だったので、「モノやサービスを売る」という縛りがあって考えやすかったです。
*Solutionを先に考えがちですが、Problemをしっかり固めてからSolutionを検討し始めるべきです。なぜなら、Solutionはいくらでも変えられるから。Problemを変えると前提が全てひっくり返ってしまいます。
授業で習ったのが、「9倍を超える価値を提供しろ」でした。これは、サービス提供者はプロダクトを実際より3倍よいと思い、顧客は現状使っているものが3倍よく見えるという話です。3×3で9倍ですね。
なるほど。とはいえ、誰にとっても9倍である必要はなくて、本当に1人でも数人でもいいので、絞りに絞ったユーザーの方にとって最高の価値(100倍?笑)を提供できるように、尖った魅力がまずは大事なのかなと思いました。
教授がもう一つ強調したのが、”Value proposition” = あなたの製品が顧客に提供する価値を言語化することです。VPを書くためには、ターゲット顧客は誰か?顧客が求めるコアベネフィットは何か?を組み合わせます。
VPはテンプレートがあるので、それに沿って書きましょう。
“(製品名)は、(主張の根拠)によって、 (ターゲット顧客) に (コアベネフィット) を提供します”
Step1-2を通じて、かなりイメージが具体化していることでしょう。Step3ではビジネスとして成り立つのか(Feasibility)を検討していきます。
Step3:ビジネスプラン(Feasibility)
ProblemとSolutionが決まったら、ガンガンプロダクトを作っていくぜ!となりがちですが、ビジネスとして成り立つのかも重要な視点です。
ECサイトもそうですが、製品は考えられても、原材料の調達やお客様に届けるまでの流れをきちんと検討することが大切ですよね。価値をどう提供するか。初めて起業する人はこのプロセスが抜け落ちることが多いそうです。
この際にコストも念頭に入れて、価格のイメージを考えていました。比例費や固定費、損益分岐点も持っておくとよいです。
アイディアがビジネスとして成り立ちそうと思ったら、この先少しずつ形にしていくのですが、ここで創業チームの重要性について見ておきましょう。
Step4:創業チームの重要性と役割
チームの重要性については、授業で何度も取り上げられました。1人でやるかチームでやるかの違いがありますね。
チームでやるほうが良さそうですが、1人の創業者の方が成功しやすいという調査結果があり、メリットとデメリットを考える必要があります。複数で起業した場合、アイデア創出やそれぞれの専門性を活かせるメリットがありますが、意思決定で摩擦が起こうるというデメリットもありますね。
授業で習ったのは、チームにはLegitimacy(正統性)が必要だということです。わかりやすくいうと、なぜあなた(のチーム)が取り組む必要があるのか?ですね。SpaceXの例が出て、イーロン・マスクの起業家としての実績があり、メンバーにロケットエンジンの開発者がいて、正統性満載だね、という話でした。
Step5:ブランディング
この時点ではまだアイデア段階です。ここでは、アイディアの具体化とブランディングを進めながら、仮説の検証をしていきます。
ランディングページ(LP)をこの辺で作りますね。LPとは、特定のユーザが求めている情報を1ページに集約したもので、起業の場合はプロダクト紹介が多いです。ここでイメージを具体化し、サイトのトラフィックや登録者数を見ながら仮説を確かめていきます。LPをFacebook広告に出して、カスタマーの反応を確かめるのも有効な手段です。
私の場合はECサイトなので、実際にサイトイメージやストアデザインを固めていきます。この時にムードボードが役に立ちました。ムードボードとは、ウェブサイトや雑誌・本などから、『好むスタイル、イメージ(画像)、フォント、色』などの、ストアデザインに刺激を与えるような素材を集めたものです。この作業によって、ブランドに合ったデザインがより鮮明になりましたね。
面白いですね。この時に、自分たちの強みはなんなのかも一緒に考えますよね。
この時点ではプロダクトはできていませんが、イメージを具体化し、ランディングページを公開することで、実際のアクセスや顧客の反応を確かめることができます。これは、スタートアップの失敗の最大の理由である「プロダクトは作ったがニーズがなかった」を避けるための、リーンスタートアップの手法です。
後編へ続く
さて、Step1-5にかけて、アイディアやイメージを少しずつ形にしてきました。後編のStep6以降では、プロダクト(製品・サービス)作りに入っていきます。一通り読めば、MBAの起業プログラムで学ぶ内容は網羅できることになります。
Yusaku(UC San Diego MBA @アメリカ)のブログにて紹介しています。こちらからどうぞ!