今回は、IE Business SchoolのPeriod1(最初の3ヶ月)で学ぶデータ分析の授業紹介の第二弾です。
前回の内容
回帰分析(単回帰・重回帰/線形・非線形)をエクセルのデータ分析ツールを使い、ハンズオンで学んだ授業の内容を紹介しました。
Risk Analysis
今回はカリキュラム3本柱のうち2つ目、Risk Analysisについて授業内容に沿って紹介します。いつものようにケースを使いました。
①ケース
あなたは小さな航空会社の社長です。事業拡大のため、もう一機小型の航空機を購入するかどうか検討しています。想定フライト回数、チケット価格、空席率、コストなどを考慮に入れながら、意思決定をしなさい。
②予習
ケースの中にデータがふんだんにあるので、それをもとにまずはP/Lを作成します。次いで、NPVを計算。割引率は、ケース内で指示がありますが、銀行にお金を預けた際の利子率で設定します。ベース・ベスト・ワーストケースの3パターンが完成。しかし、それぞれのケースの起こる確率を考慮しないと意思決定ができないため、授業で意思決定までのステップを習うことになります。
*データ分析の前提として、自力でPLとNPVを計算・分析レベルが必要です。
*NPVが不明の方はこちらを参照ください
NPV(正味現在価値)とは?計算方法とExcelの関数をわかりやすく図解
ビジネスの教科書
Risk Analysisの5ステップ
授業では、意思決定までの5ステップを学びました。
①Single point forecastingはNG
これはステップというより、当たり前ですが、一応書いておきます。不確定要素と起こりうる確率を考慮しない予測(一点予測)はとても危険です。先ほどの例で言うとベースケースは利益いくら、だから投資しよう!なんてもっての他です。
②シナリオ分析
一点予測はNGと言うことで、まずは複数のシナリオを作りましょう。状況を整理して構造化します(この場合はP/LとNPV)。予習でもやったように、ここでは3つのシナリオがあります。これにより、ワーストとベストケースの稼げるNPVの幅が分かりますね。
③感度分析
次に感度分析をやります。目的は2つあり、チケット価格などのパラメータ(不確定要素)が動いた時に、NPV(目的変数)にどれだけ影響するかを見ること、もう一つはNPVに影響する主なパラメータを見極めることです。
まずは各パラメーターを1つずつ動かしてみて(One-way)、NPVがどれだけ動くのか見ていきます。その際にトルネード・チャートを作って、影響が大きい要素を上から並べていきます。
*感度分析とトルネードチャートが紹介されています。
グロービス経営大学院
影響が大きい主要なパラメータが絞れたところで、2つ(以上)のパラメータ(two-way+α)を同時に動かしていきます。例えば、チケット価格の変動を縦軸、空席率の変動を横軸に、マトリックスを作るイメージです。
これで感度分析は完了ですが、これで十分でしょうか?まだ意思決定はできないですね…。次のステップで確率分布についてみてきましょう。
④モンテカルロ・シミュレーション
ここでは確率分布の考え方とモンテカルロ法について、用語の意味をまずは押さえます。
アタリマエ!
*モンテカルロ法とは、乱数(ランダムな数)を使って何千回〜何万回とか数多くシミュレーション行うことで、起こりうる事象を確率分布で見ようという方法です。
Crystal Ball
今回のケースでは、パラメータを色々ランダムに動かしてみて、何千回シミュレーションすれば、NPVがどうなるか、確率分布で見れますね。という話です。ランダムとは言いつつも、各パラメータの上限と下限値、どんな分布になるかは自分で決める必要があります(例:チケット価格は100-200ユーロにはおさまるだろう、平均的には150ユーロだから150ユーロ付近が多いだろう)。
実際にシミュレーションをすると、NPVがプラスになる確率は◯%、でも◯%の確率で大赤字、一方で大黒字も◯%想定できる。つまり、NPVを確率で考えることができるようになります。
⑤意思決定
シナリオができ、感度が分かり、さらには確率的にも分析ができました。ようやくデータ分析の観点から、意思決定をすることができます。ただし、実際のビジネスの世界では定量情報だけでなく定性情報も加味しますし、実際に作ったモデルの前提も前提にすぎず、しかも状況は変化していく、という不確実性の塊です。そうした世界でも今回学んだリスク分析の手法は、現代人必須のスキルでしょう。
グループ課題
教授は私たちを決して休ませてくれません笑。ケース+レポート課題が出されました。今回のケースは、航空会社の予約ポリシー、すなわちオーバーブッキングポリシーを決めろいうお題でした。予約したのに当日現れないNo-Showの率を計算し、オーバーブッキングと空席で出発、の両方のコストを考慮しながら、最適なチケット枚数を売ることが求められます。これも習ったことを使いながらシミュレーションを行い、統計的に回答することが求められます。
おわりに
今回はRisk Analysisを紹介しました。まだ授業の3分の2も終わってません。MBAのスピード感はすごい!。Decision Theoryについては次回の記事で紹介します。