今回は、IE Business Schoolで学ぶデータ分析の授業を紹介する3回目の記事です。
第1回で、回帰分析(単回帰・重回帰/線形・非線形)を紹介しました。第2回では、Risk Analysisと言って、シナリオを複数作り、結果を統計的にシミュレーションすることで、起こるであろう結果(例えば利益)を確率的に分析する手法を紹介しました。
Decision Theory
今回は、Decision Theoryについて授業内容に沿って紹介します。いつものようにケースが事前に配信されます。
①ケース
あなたはワイナリーのオーナーで、ブドウの収穫時期が近づいています。しかしながら、天気予報によると、大型のハリケーンが襲来する可能性があります。
ハリケーンが襲来した場合、収穫前のブドウが傷ついてしまい作ったワインの価格が下がります。但し、ハリケーンが襲来してもブドウが特別に甘くなり、ワインの価格が高騰する場合も僅かながらあります。
一方でハリケーンがルートを外れて、ブドウ畑に影響しない場合があります。その場合は、収穫したブドウの甘さによっていくつかのシナリオが起こり得ます。
また、ハリケーンの襲来前にブドウを収穫する選択肢もあります。ワインの価格は落ちますが、一定額の収益は確保することができます。
さて、あなたはブドウをいま収穫しますか、しませんか、意思決定してくださいという問いです。
②予習
とりあえず下記のような決定木を自分で作って問題を構造化します(ケースはもっと複雑です)。あとは授業で理解することにしましょう。
注:最近は機械学習のアルゴリズムの名前(決定木やランダムフォレスト)で決定木が頻繁に登場するようになってきました。何を言っているのかわからないという方は下記をどうぞ。
*タイタニックの乗客データから、生死を分けた条件(性別?年齢?など)はなんだったのかを決定木を用いて分析した記事です。
Exploratory
意思決定までのステップ
授業では、意思決定までのステップを学びました。
①決定木を作成
今回のステップはこれにつきます。きちんと場合分けして、各シナリオの収益と確率から、各シナリオの期待値を計算します。教科書的には期待値が一番高いシナリオを選べばOKです。
あれ?というほどあっさり終わりましたが、重要ポイントをいくつか紹介します。
②追加コストを払って不確実性を下げられないか?
ビジネスの世界では追加コストを払って情報を取りに行くことは普通ですね(調査、コンサル、検査など)。授業ではそうした追加コストがペイするのかしないのか(追加情報の価値)を計算する手法を学びます。ケースでは、追加料金を払えば詳細な天気予報を入手できると言う例でした。その際に、ベイズ理論の理解が必要なので解説しておきます。
Qiita
③リスクマネジメント
リスクについては決定木によって計算した期待値では考慮できないため、別途考える必要があります。起こりうる確率は低いがインパクトの大きいシナリオを無視するのか?金額の大きいプロジェクトの場合は?期待値はやや低いがリスクの低い別の選択肢があったら?などの問いが考えられます。
グループ課題
やはりグループ課題がありました。こちらもケースを読んでレポート提出が求められます。あなたはリゾート専門の開発会社の社長です。あなたが一年前に購入したスキーリゾートの土地の購入権を行使しますか?(=土地を買いますか)という問いです。訴訟が絡んでいたり、リゾートの集客がうまく行くかどうか、別の土地開発をする、など複雑な状況のため、これをきっちり決定木で描けるかどうかがポイントです。よくできたケースなので、途中で追加情報が出てきたりします笑(ベイズを使いましょう)。
おわりに
ついにIEのPeriod1で学ぶデータ分析の授業が終了しました。全くのゼロ知識の方でも、データ分析に必要な知識が身につくように設計されていますが、これだけの内容を2ヶ月で学ぶのは無理があると心の中では思っています笑。
実際私も留学前に自分で学び、留学中も同級生と議論したり、先生に質問したりしましたが、完璧に理解できたわけではありません。とはいえ、これだけの内容を短期間で詰め込めるのは(全教科です笑)、MBAの価値なのかも知れません。
カリキュラムの出発点、①思考(クリティカルシンキング・データ分析)は一旦ここで終了です。次の記事から、経営戦略を学んでいきましょう。