独学MBA13_クリティカルシンキング(応用)

1. 思考
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今回は、IE Business SchoolPeriod2で学ぶCritical Management Thinkingの授業を紹介します。

授業の目的

効果的なマネジメント(意思決定とリーダーシップ)には、スキルやルールを超えたイマジネーション、クリエイティビティ、多面的で統合的な思考が求められます。そうした思考を身につけるために、経済、社会、マネジメント理論、歴史と言った枠組み(フレームワーク)を学んでいくのが、この授業の目的です。

カリキュラムと学んだ内容

大きく5つに分けられます。

①ストーリーテリング(物語)の力

このパートの結論価値観や認識は人によって違うので、思考の前提を疑うことが必要。今回のテーマである「物語」は、私たち自身が恣意的に作り上げたもので、物語の持つパワーを、過去の人類の歴史から紐解いていきます。

サピエンス全史

この本は、我々の人類に対する認識をひっくり返します。ホモ・サピエンス(我々人間)は、人類という種族のうちの一つに過ぎないということ。歴史で習う、アウステラロピテクスから人類へ一直線に変化する図は間違っており、複数の種族で生き残ったのが人類です。

では、なぜホモ・サピエンスが勝ったのか?なぜ地球上に君臨しているのか?その理由が、重要な3つの革命で説明されています。

・認知革命(7万年前)

人類が他の種と違うのが、「虚構(フィクション)」の能力を手に入れたこと。想像力を使うことで、人類は社会性と協調性を手に入れました。こうして、見知らぬ人が協力し、大規模な集団を形成できるようになったのです。この「数の暴力」が、ホモ・サピエンスの勝利の最大の要因です。

・農業革命(1万年前)

狩猟採集から定住生活に移行。小さな集団から大きな集団に変化する中で、知恵や技術が集約され、学問が誕生。コミュニケーションも、家族から匿名の集団へと発展していきました。そして、フィクション=貨幣・帝国・宗教という3つの普遍的秩序が生まれました。

・科学革命(500年前

きっかけは、人類が自らの無知を認めることでした。以降、貪欲に知識を求めていく。こうした知識の追求にはお金がかかるため、イデオロギー・政治・経済力に左右されることになります。

そして、フィクションの流れを引継ぎ、時代は現代へ。「フェイクニュース」、「ポピュリズム」といった薄っぺらい主張に流され、浅はかな判断をするのはなぜなのか?という問いに移っていきます。

人間は自分の知識を過大評価するという「Knowledge Illusion(知識の錯覚)」を持っています。こうした「知ってるつもり」に陥ってしまうことを、認識することが大切です。詳しくはこちら。

『知ってるつもり 無知の科学』

HONZ

なんと、「サピエンス全史」の著者が、この本の書評を書いていましたので、紹介します。

People Have Limited Knowledge. What’s the Remedy? Nobody Knows

The New York Times

住宅バブル

ケース・シラー米住宅価格指数*の論文を例に、住宅価格の変動は、需給だけで決まるのではなく、人々の期待やストーリーといった「フィクション」に大きく影響を受けるという内容です。


*ファイサーブ社が算出し、S&P社が発表する指標。全米主要10都市の一戸建て住宅価格の再販価格の変化を調査したもの。 米国内での住宅価格動向を見る上で一般的な指数と言われている。

②企業を理解するためのフレームワーク

テーマが人間から企業に移ります。経営戦略理論について、「3つ」のアプローチが紹介されます。

外部の影響を重視

1つ目は、ポーターによるSCP理論(Structure→Conduct→Performance)です。これは企業の業績は、市場構造で大きく決まるという、外部の影響が強いという考え方です(例:Five force)。どう戦うかよりも、どこで戦うかが大事という話ですね。

外部環境分析:ポーターのファイブ・フォース分析から考える

Harvard Business Review

内部の強みを重視

2つ目は、リソース・ベイスド・ビュー(RBV)に代表される、企業の内側の強み(経営資源)に注目する考え方です。つまり、外部環境<内部の強みに着目します。

リソース・ベースド・ビューとは・意味

グロービス経営大学院

その中間

そして3つ目は少し観点を変え、経済主体によって無数に行われる「取引」がテーマです。市場取引には取引コストが発生します。多大な取引コストを回避するため、企業は取引先を自社資本に取り込みます(組織取引へと内部化)。逆に、内部化のコストが取引コストを上回るときには、市場取引という形態が採られます。

取引コスト

Osamu Hasegawa Films

③組織や従業員のマネジメント(古典)

次のテーマはマネジメントです。ここからは、プリンシパル=エージェント理論という、依頼人と代理人の関係をテーマに話が進んでいきます。君主と人民、経営層と従業員、株主と経営層などの関係です。

組織と人について書かれた古典をまずは見ていきます。さくっと概要をWikipediaで押さえましょう。

「政治学」:アリストテレス

「弁論術」:アリストテレス

「リヴァイアサン」:ホッブズ

「君主論」:マキャヴェリ

④組織や従業員のマネジメント(現代)

現代の研究を2つ見ていきます。

チームの生産性と参加についての研究

授業で取り上げた課題図書が超絶わかりにくいので、もう全く違う文献を取り上げます。

「効果的なチームとは何か」を知る

Google

パフォーマンスマネジメント

パフォーマンスマネジメントとは、個人のパフォーマンスを最大限発揮させ、結果につなげる人材マネジメントの手法です。

パフォーマンスマネジメントってなに?活用するとどういいの?

Goalous Blog

対比として、従業員の成果をランキング化し、上位はボーナス、下位はクビという「強制ランキング」の考え方が紹介されます。授業で使ったハーバードの記事が読めますので、紹介します。

Forced Ranking: Making Performance Management Work

⑤株主価値の向上と欠点

プリンシパル=エージェントの関係から発展して、株主と会社(経営層)の関係を考えます。授業で使ったHarvard Business Reviewの記事を読むのが一番ですが、企業が株主の代理人という認識のもと、株主価値の向上を優先して考えるべきだという風潮が強くなり過ぎて、弊害が多く出ているという内容です。

The Error at the Heart of Corporate Leadership

⑥気候変動時代のマネジメント

教授が世界の終わりについての話をしよう、と予告した授業。西暦2393年の中国の歴史学者の視点で、地球温暖化について書かれた本を題材に、ディスカッションします。

ストーリー:人類は温暖化を止められず、海面の上昇により世界の多くの地域が浸水。人々は移動を余儀なくされた。こうした移動により世界的なパンデミック(第2のペスト)が発生、人類の多くが犠牲となる。もはやこれまでかというところで、日本の科学者が光合成の能力が強い藻を発明したことで、温暖化は抑えられたという話です。

ポイントは、(未来の)人類がなぜ自分たちは滅びつつあるのか、なぜ止められなかったかを知っている、というところです。答えは温暖化で、気温が上昇しているという「事実」よりも、経済的利益を優先する政治などの「イデオロギー」が勝ったためです。

現実の私たちはどうでしょうか。まさにそうではないでしょうか。考えさせられる授業でした。

おわりに

クリティカルシンキングという授業名なので、ロジックツリーとかを学ぶのかと思っていたら、全く違う内容でした。いい意味で裏切られた、なかなか面白い授業でした。

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