今回は、IEビジネススクールで学ぶ、Managerial Accounting(管理会計)の授業を紹介します。Period1の財務会計と合わせて、ビジネス界の「共通言語」である会計をマスターします。
授業内容はさすがMBA、実践を重視。マネージャーとして、管理会計をすぐに仕事に使えるように、カリキュラムが作り込まれています。
管理会計の考え方とツールを理解することが目的で、具体的には4つです。
- 製品/サービスのコストを決めること
- 適切にコストを配分すること
- コスト分析ができること(損益分岐点、差異分析、予実分析)
- 管理会計を用いた意思決定
管理会計とは何か?をまずはさくっと押さえましょう。社外に説明するための財務会計に対して、社内で計画・管理・意思決定をするための会計です。
管理会計を使えば、ビジネスに関わる6つのトピック(倫理、戦略、リスク、CSR、プロセス、リーダーシップ)についても、定量的に判断できるようになります。
ビジドラ
カリキュラム
大きく4つのパートに分けられます。コストの分類・計算に始まり、コスト配分、コスト分析、最後に意思決定という流れで学んでいきましょう。
1_コスト分類・計算
以下のような、コスト分類を理解できるようになるのが、最初のゴールです。数が多いですが、ざっくり理解できれば問題ないので、まずは特徴を押さえましょう。
- 直接費/間接費(特定の製品や組織に直接紐づくかどうか)
- 製造費/非製造費(製造に関わるかどうか)
- 製品原価/期間原価(製品に紐づいて計算、期間に紐づいて計算)
- 変動費/固定費/混合費(売上の増減で変動するかどうか)
- 総合原価/個別原価(製造原価をまとめて計算するか、個別製品ごとに計算するか)
- 全部原価/部分原価(変動費と固定費をまとめて計算するか、変動費だけで計算するか)
直接費と間接費
あらゆる業界で使われる変動費/固定費に加えて、主に製造業で使われる直接費/間接費という概念を学びます。直接費は生産に直接関係する費用、間接費は生産に直接関係しない費用です。
経営を学ぶ
原価計算
原価計算とは、ビジネス上の意思決定をするために、製品やサービスを提供するためにかかった費用を計算することです。先ほど学んだ直接費だけでなく、間接費も含めて計算します。
ZAC
製造原価
製造原価とは、製品を製造する際にかかる諸費用の合計です。材料費、労務費、経費の3種類を、直接費と間接費の2パターンに分けて計算します。
ITトレンド
製品原価と期間原価
製品原価とは、製品単位で原価を集計します。製品の製造過程では費用として計上されず、実際に販売された段階で、売上原価として計上されます。コスト発生と費用計上のタイミングに差が出てくることに注意する必要があります。直接材料費、直接労務費、製造間接費がこれにあたります。
期間原価とは、製品単位で集計されるのではなく、発生した時点で一度に全額を費用として計上されます。製品原価とは異なり、コスト発生と費用計上のタイミングは一致します。販売費・一般管理費がこれにあたります。
総合原価と個別原価
総合原価計算とは、一つ一つの製品ではなく、その期に生産した製品の原価をまとめて計算するやり方です。大量生産品に向いています。
個別原価計算とは、一つ一つの製品ごとに原価を計算するやり方です。受注生産品に向いています(船舶など)。
全部原価と直接原価
次に、原価計算の2つの方法、全部原価計算(Absorption costing)と、直接原価計算(Variable Costing)の違いを理解しましょう。
全部原価計算は、変動費も固定費も全て原価に含めます。計算が簡便な一方で、生産量や販売量によって原価率がブレる(=単位当たりの固定費がブレる)ため、正確な原価の把握が難しいです。
直接原価計算は、変動費のみを原価に含めるため、原価率が一定で計算できるのと、損益分岐点を把握しやすいです。
MoneyForward Bizpedia
標準原価計算
最後に、標準原価計算の考え方を理解しましょう。
標準原価計算は、事前に目標値である「標準原価」を設定するやり方です。次に、実際に発生した「実際原価」を計算し、標準原価と比較、分析することです。このように目標と実際のコストを比較、分析することで、ムダ、ロスを排除するためのアクションを打つことができます。
Foresight
2_コスト配分
コスト配賦
ホテルのケーススタディを基に、配賦の考え方について学びました。
ホテルの中に、宿泊施設、レストラン、エンタメ施設の3つの部門があるとしましょう。明確に分けられる費用(宿泊施設の備品、レストランの食材、エンタメ施設の備品など)は問題ありませんが、共通費用のセキュリティ、管理部門の人件費などはどうやって配分すれば良いのでしょうか?
例えば従業員の数、面積など、一定の基準でコストを分配していくのが通常です。こうした基準を変えるだけで、部門の利益が上下するので、とても重要な意思決定になります。実際に計算をしながら、どうやってコストを配分していけば良いのかを学びました。
ビジドラ
活動基準原価計算(ABC)
次にABC、すなわちActivity based Costingについて学びます。これは間接費を一つの基準(所要時間など)で一気に各部門に配賦するのではなく、活動別(例:製造、物流、販売など)に一旦分けるというステップを踏んだ後に、配賦します。
これにより、各製品にかかった費用を活動別に分析し、事業に活かすことができます。一方で、データ収集と計算が面倒なのがデメリットです。
Professional Journal
3_定量分析
差額原価/機会費用/埋没費用
この3つの概念は、意思決定のための重要な考え方なので、しっかり理解しましょう。
差額原価とは、複数の施策のコスト総額を比較した時の差額のことです。
機会費用(オポチュニティーコスト)とは、同時に選べない選択肢の一方を選んだことによって失われた、もう一方の選択肢なら得られたであろう利益のことである。
埋没費用(サンクコスト)とは、意思決定の内容に関わらず回収できないコストのことである。
経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~
予実管理
予実管理とは、「予算と実績を管理すること」です。一般的には企業全体の予算(事業利益、諸経費)、営業予算(売上、仕入、営業経費)などの数値目標に対して、計画通りに実績が推移しているかどうかをリアルタイムに確認し、管理していきます。
売上予算に始まり、PL、BSまで落とし込んでいきます。
BizAppチャンネル
差異分析
予算差異分析は、予算と実績を比較し、その差額を算出し、当該期間にどのような変化が起こったのかを分析し、現在の経営上の課題を見つけることです。
こちらは、中国の半導体製造工場のケースを用いて学びました。
グロービス経営大学院
損益分岐点
今まで学んできた考え方を用いながら、損益分岐点について考えます。CVP分析(Cost/Volume/Profit)とも言います。
シンプルなので理解は難しくないですが、新事業を立ち上げる鞄メーカーのケースを用いて実践で学びました。
Money Forwardクラウド会計
4_意思決定
今まで学んだ内容をもとに、マネージャーの意思決定について学びます。各部署が責任をもち、数字を見ながら現場で判断していくことが求められ、主役は現場のマネージャーになります。
ここでは、3つの組織形態から、必要な能力を考えてみましょう。
コストセンター
会社にとって利益を生まず「コストとなる部門」を指します。具体的には、総務部や人事部、経理部などの間接部門など。研究施設や倉庫部門などもコストセンターに含まれることも多いようです。
コストセンターは、部門に係る費用を最小限に収めることをミッションとしています。
プロフィットセンター
「利益を生み出す部門」を指します。営業やマーケティング、メーカーの製造部門、経営戦略部門などもプロフィットセンターに位置付けられることがあります。
企業によっては、支店や営業所をプロフィットセンターと定義するケースもあります。
プロフィットセンターでは、収入と費用の両方を集計し、差額である利益を最大化するのがミッションです。「事業部制」と呼ばれる会社もあります。
ここは、プロセスに着目する科目「オペレーションズマネジメント」にも密接に関わってくる分野でもあります。
インベストメントセンター
自組織であがる利益と、その利益を生み出すために投下された資産(資本)を比較し、投資収益性で評価する組織です。ROI(投資収益率)、RI(残余利益=当期純利益ー株主が求める収益)で計測します。
さらに、時間軸(会計期間)を超えて、どれだけの収益価値を生み出すかまで評価します(NPV、IRR、回収期間法)。この辺はファイナンスの分野になってきますが、マネージャーや経営層には必須の考え方です。
Management Analytics & Strategy
おわりに
コースの後半で、コロナ関連のビジネスを発案し、ビジネスモデルから詳細な投資計画を作るという、グループ課題がありました。我々のチームは、子供向けマスク事業を検討したのですが、実際に会社で新事業を提案するような内容で、とても実践的でした。
また、全ての授業で企業のケースとデータ入りのエクセルを使いながら進むので、実際に仕事で検討していた時のことを思い出しました。管理会計をハンズオンで復習できる良い機会でした。