IE起業プログラム:投資家に一番響くピッチ内容は「トラクション」

9. アントレ
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今回はIEのStartup Lab番外編で、テーマは「トラクション」。

トラクションとは、市場需要の定量的な証拠(=実績)。プロダクトの売上、ユーザー数、事前サインアップ数などが主にトラクションとして用いられます。スタートアップ失敗の最大の理由は、「ニーズがなかった」ことなので、「論より証拠」を投資家に示すことが何より大切です。

本記事では、「スタートアップにおけるトラクションの重要性」、「スタートアップが使うべき19のトラクションチャネル」を紹介していきます。

参考書籍

Startup Labの授業で紹介された本を参考にしました。スタートアップが顧客を掴むための19のチャネルが紹介されています。かなり具体的に書かれているので、マーケティング業務や新規事業を担当されている方にもオススメです。

50%ルール

トラクションが重要なのは間違いありませんが、どれくらいの時間をかけるべきでしょうか。本書では、プロダクト開発とトラクション獲得の割合は50:50にすべきと提唱されています。

プロダクトがあっても、トラクション(ニーズ)がなければ、そのスタートアップは失敗です。そこで、リーンスタートアップの手法を使いましょう。プロダクト開発とトラクション獲得を行ったり来たりし、プロダクトの修正やピボットを繰り返しながら、進めていきます。

フレームワーク

トラクション獲得には19のチャネルがありますが(のちほど説明)、どうやって最適のチャネルを選べば良いのでしょうか?

その時に有用なのがこのフレームワークです。

  1. 19のチャネルそれぞれで、一番使える方法を選ぶ(ブレスト
  2. 上で選んだ方法でスモールテスト(基準:コスト、獲得顧客数、望ましい顧客か)
  3. 上でテストしたチャネルから効果のあったものをコアチャネルに決定

小さくテストをして検証することを繰り返しながら、ワークしないものを省き、ワークするものを見つけ出していきます。これもリーンスタートアップの手法です。

19のチャネル

スタートアップが使うべき19のチャネルについて紹介します。どのチャネルも、とにかく小さく試すということを徹底していきます。具体例があった方がわかりやすいと思うので、私が開発・提供する「ビジネスゲーム」の実例も使っていきます。

1_Targeting Blogs

ターゲットユーザーが読んでいるブログの運営者に連絡し、プロダクトに関する記事を書いてもらったり、広告を出したりする手法です。ユーザーインタビューをする際に「普段どんなブログを読みますか?」「どんな雑誌を読みますか?」などを聞いて探っていきます。

2_Publicity(PR)

Traditionalな手法で、TV、新聞、雑誌がターゲットです。本書では、まずは地域のメディアのライターに連絡をして、記事を書いてもらうように頼むという手法が紹介されています。

3_Unconventional PR

大きく分けて2種類あり、Publicity StuntCustomer Appreciationです。前者は宣伝イベントのことで、有名人とかを呼んだパーティなどですね。後者はコンテストなどが当てはまります。コンテストは低コストで実施できる手段で、お金のないスタートアップにぴったりですね。

4_Search Engine Marketing

Google Adsが一番有名ですが、検索サイトに広告を出す手法です。これも「人気キーワード」ではなく、コストの低い「ロングテールキーワード」を狙うのがポイントです。

5_Social and Display Ads

Social Adsはソーシャルメディアに出す広告で、Display Adsはいわゆるバナー広告です。

6_Offline Ads

いわゆるTraditionalな広告です。TV、ラジオ、雑誌、新聞、看板やダイレクトメールが当てはまります。スタートアップはあまりこうした手法を使わないので、逆に狙い目だということです。

7_Search Engine Optimization

いわゆるSEOですね。検索順位を上げることで、低コスト(無料?)で顧客を獲得するチャンスが上がります。

8_Content Marketing

ブログが代表的ですね。ブログは低コストで顧客を獲得する最良の手段です。ただし「Content is King」といわれるように、質がとても重要になってきます。

9_Email Marketing

19のチャネルでもトップクラスに有効な手法です。ユーザー候補を使用ユーザーに、さらにはリピーターになってもらうのに効果的なチャネルです。特徴は各ユーザーに直接届けることが可能、内容もPersonalizeすることが可能です。

個人的にも、このチャネルが一番有効だと実感しています。

10_Viral Marketing

いわゆる「紹介」手法です。世の中のあらゆるサービスで、「紹介キャンペーン」、「紹介コード」、「紹介割引」を見かけますね。とても強力なチャネルですが、前提として「紹介したくなるようなプロダクト」でなければいけませんね。

ビジネスゲームでも、おかげさまで「過去参加された方」の知り合いの方に参加頂くケースも増えてきました。これは、自分のプロダクトが少しでもお役に立てたんだな、と実感でき本当に嬉しいです。

11_Engineering as Marketing

いわゆる「インバウンドマーケティング」です。Hubspotなどが有名ですが、見込み顧客に見つけてもらい、自社やその商品・サービスに興味を持ってもらえるように仕掛けるマーケティング手法です。

12_Business Development

他社とパートナーシップを組む手法です。これにより、リーチできる顧客が増えたり、顧客に直接アプローチすることなどが可能になります。本書では、3つのパートナー候補をまずはリストアップし、Win-winの関係を築くことがポイントだと紹介されています。

13_Sales

Salesとは、「プロダクト」と「お金」を直接的に交換するプロセスだと定義されています。主に高額のソフトウェアなどと相性が良いチャネルですが、最初は20のカスタマーをピックアップすることを本書ではオススメされています。

14_Affiliate Programs

アフィリエイトプログラムは、スタートアップにとってコントロールしやすいチャネルだと言われています。なぜなら、初期費用や月額費用は比較的定額で、あとは成果報酬のため、顧客獲得コストが安定するからです。クリック型報酬だと、クリックされても顧客獲得につながらない場合、コストだけがかかってしまいます。これもまずは1つサービスを使ってみることが大事ですね。

15_Existing Platforms

現存するプラットフォームを使った場合、成功すれば大量のユーザーを獲得できる可能性があります。有名どころでいうと、AppleやGoogle Androidのアプリストア、Chromeの拡張システム、TwitterやFacebookなどですね。Evernoteはこの戦略で大成功しました。

私が現在使っているプラットフォームは、Twitter(Sun@MBA留学中🇪🇸)LINE公式アカウントYoutubeです。

16_Trade Shows

展示会もチャネルの一つです。プロダクトを紹介し、顧客候補と直接話ができ、パートナーを見つける機会でもあります。開発中のプロダクトの紹介、プロダクト発表、パートナーシップ発表など、フェーズに応じて使い道はたくさんあります。

17_Offline Events

イベントをスポンサーしたり、運営することも有効な手段です。オンラインイベントもココに含めて良いと思います。本書では、小さいOne-dayイベントを開催してみることをオススメされています。

18_Speaking Engagements

ピッチや講演などがココに当てはまります。話せば話すほど上手になるので、機会を見つけてトライすることが大切ですね。

19_Community Building

コミュニティーを立ち上げ、プロダクト提供者とユーザー、またユーザー同士のコミュニケーションの場を提供する手法です。これも前提として、コミュニティーの質が高く、ユーザーの方の役に立たないと意味がないです。本書では、まずは自分自身でいくつかのオンラインコミュニティに参加することがオススメされています。

おわりに

トラクションを増やし続けること、これができないとスタートアップは失敗してしまうので、とても重要なポイントです。私も授業で紹介されるまでは、19もトラクションチャネルがあるなんて知らなかったですし、初期のスタートアップに向けて書かれたこの本はとても参考になりました。

今回は、IEの目玉の一つであるStartup Labから、トラクションに焦点を当てて説明しました。1ヶ月間の体験記を読まれたい方は、こちらからどうぞ!