MBAのエッセンスを独学で学ぶカリキュラムをシリーズで紹介していますが、今回は、実際の企業のケーススタディを読み解いていこうと思います。
今回の参考図書は、『Business Despite Borders(Companies in the Age of Populist Anti-Globalization)』です。スペインのIEビジネススクールと一橋ビジネススクールの両教授が編纂した、グローバル化とその中でビジネスが果たす役割についての15のケースが収録された本です。
ここからは、自分のメモの要素が強くなりますが、大事だと思うこと、キーワードを中心に記していきます。引用部分は『』で表します。15ケースは長いので、3ケースごとに5つの記事に分けます。
Globalizationとは?
グローバル化は、ビジネスの世界において最大の原動力であるが、近年はナショナリズムやポピュリズムの逆風が吹いている。それに対して、『the best antidote to bad international politics is good business』とあるように、ビジネスで世界をより良くしよう、課題を解決しよう、というのが本書の思想である(ビジネススクールらしいですね)。
ビジネスのグローバル化:ポピュリズムの悪夢とテクノロジーによる希望
この章では、企業の国際化と「保護貿易」が紹介される。グローバル化に逆行する動きとして、BrixitやTrumpという政治的な動きがありますね。
次に紹介されるのが、MBAの定番、過去の歴史の振り返りです。グローバル化は1980年に米・日・欧・韓で起こり、ベルリンの壁崩壊後はBRICSが主役、現在は西洋からアジアへ中心が移動している。
グローバル化の合言葉は『think globally, act locally』だが、組織としては、ビジネスユニット(事業軸)と地域ユニット(地域軸)のマトリックス組織が用いられることが多い。
また、グローバル化の鍵は、コア部分の標準化とコア以外の部分のローカル化である。すなわち、全世界の統合と地域別の適応性の両面からアプローチする必要がある。
グローバル化は持続可能でバランスの取れた成長が必要で、それが欠けていると貧富の差の拡大やポピュリズムにつながることもある。ポピュリズムは中長期的には貿易の邪魔をし、不信をもたらす(短期的には?トランプがやろうとしている通りですね)。
しかし、テクノロジー(UberやAirBnBなどのサービス、ビックデータ、クラウド)は世界をより便利にし、ビジネスは政治的な障壁を乗り越えるための解決法だと述べられる。そして、CEOの役割はかつてないほど多様化しており、政治的な素質も要求される。
最後に、ビジネススクールは『Good Globalization』の先駆者であるという意思表示でこの章は終わる。
変革のガバナンス:企業と政府のTechnological Disruptionへの適応
Technological changeは新たな機会と脅威をもたらし、そしてTechnological disruptionは新しいビジネスパラダイムと政治的な変動を生み出す、から始まる。
テクノロジーとイノベーションは個々の企業に成功をもたらす一方で、Negativeなインパクトももたらすため、変革に対するガバナンスが重要となる。
具体的な変化としては、人口爆発、GDP増大、長寿。そして産業構造の変革(第1〜2次産業の没落だけでなく、第3次産業=サービス業の業務の機械化)はリスクであり、人間の価値はEmpathyとCreativityに帰結する。
『Great Decoupling』という概念が登場し、生産性の向上が賃金の向上(=中流階級の富の源泉)につながらなくなるという意味だ。つまり貧富の差の拡大と中流階級の没落が起こる。中流階級が没落するとビジネス環境は厳しくなり(消費拡大の推進力はこのゾーンですよね)、BrixitやTrumpなどにつながる。ここで『Precariat』という言葉が紹介され、これは非正規雇用や失業者という不安定な雇用状態にある人の総称である。
貧富の差の拡大や賃金の重要性が低下する事を解決するためには、複雑な政策が必要だ。労働市場の変化に対応できる人材の育成(どうやる?)や資産への課税などがある。一方でビジネスのやり方も変わってきて、ステークホルダーが株主や従業員だけでなく地域や社会といった部分まで広がったり、第4次産業(for social benefit)という概念が登場したりする。
まとめると、政治的混乱を生み出しているのは経済の構造転換であり、それは富が創出と分配が生み出している。これに対応するには技術のトレンドや広義のステークホルダーへの影響をきちんと押さえ、対応することである。ビジネスの持続可能性はこうしたことへの理解が求められる。
企業におけるダイバーシティ
まず、組織のダイバーシティが3つに分類され、それぞれに対して組織が取るべき戦略が紹介される。
①Demographic diversity(Samenessの関係性、Originがアイデンティティ)
→バリアを取り払うこと
②Experimental diversity(Affinityの関係性、Growthがアイデンティティ)
→Minimum interventionの思想で、各コミュニティの活動を尊重する(Neutralityを大切にする)
③Cognitive diversity(Complementarityの関係性、Aspirationがアイデンティティ)
→違いを共有した上で共通のゴールを目指す(組織からプロジェクトへ)
3つ目のAspirationのコミュニティが特に重要で、differenceがグループを結びつけるということだ(ビジネススクールが目指す環境ですね)。SNSでは個人は複数のグループに同時に帰属することになるが、これにより住む場所ではなく、働いたり活動する場によって個人は規定されるようになる。
平たく言うと、Diversityを理解し、適切なStrategyを取る事で、Differenceから、InnovationやEfficiencyを生み出そう!ということを言いたいのだと思いました(すいません、当たり前ですが)。
1/5のまとめ
ビジネススクールが出版した本という事だけあって、ビジネススクールが目指すゴール、思想みたいなものを感じた。グローバル化とテクノロジー化という2つのトレンドを、それぞれポジティブ・ネガティブの両面から考察し、政治的・歴史的な背景を踏まえた上で、それを乗り越えるための方策(リーダーとしてどう解決していくのか)を提案している。
ケーススタディを読むのは初めてだが、おそらくこうした大きなトレンドを、具体例とディスカッションを通じて理解し、将来に備えるのがゴールなのかな?と勝手ながら思っています(授業を受けた事がないのでわかりませんが …)。
英語力(理解力とスピード両方)の不足と、これを毎日勉強するというMBAの大変さがある意味想像できました(泣)。