今回は、IEのPeriod2で学ぶ、Entrepreneurial Venturingの授業を紹介します。かなり実践的な内容で、詳しくまとめました。
授業の目的
Period1では、起業家の持つべきマインドセットと、Problemを見つけることに集中しました。
Period2では、マインドセットの深堀と、課題の設定、アイディアテスト、バリデーション、さらにはビジネスモデル、投資家へのピッチに至るまで、ハンズオンで学んでいきます。今回も教授は、シリアルアントレプレナーでした(奥さんもお母さんもアントレプレナーのアントレ一家)。
カリキュラム
リーンスタートアップの方法を用いながら、チームで一つのアイディアを持って進めていくのですが、通常の固定グループではなく、各自が自由にチームを組むというやり方でした。まずはアイディアを掲示板に投稿し、仲間集めから始まります。
私はオンライン学習プラットフォームをテーマにしました。メンバーは、レバノン、ベネズエラ、インド、日本の4人。私以外は全員エンジニアで、今回も個性的なメンバーが集まりました。私は、メンバーの特性上、CEOの役割を頂きました。
カオナビ
1_起業の心構え
Period1のおさらいとして、アントレプレナーが答えるべき3つの質問が紹介されます。
- 自分はどこへ向かいたいのか?(信念、ゴール)
- どうやって向かうのか?(戦略)
- 自分にできるのか?(リソース)
また、アントレプレナーの心構えもこの記事を通して考えました。
2_バリューとは?
次は顧客にもたらすバリューについて、「バリュープロポジションキャンパス(VPC)」を用いながら学んでいきます。
VPCは、自社の製品やサービスが提供する価値と、顧客の課題・ニーズのずれを解消するためのフレームワークです。スタートアップ失敗の第一の理由は、提供する製品・サービスが顧客が使ってくれないです。VPCで早くからズレを修正していくことが大切ですね。詳細は下記の記事をどうぞ。
ケースでは「シルクドソレイユ 」を取り上げ、「ブルーオーシャン戦略」と「戦略キャンバス」を学びました。授業でディスカッションをした後に、ダメ押しでディスカッションボード(掲示板みたいなツール)で議論することが求められます。
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3_リソース=お金だけではない
この回では、ICE HOTELの創業者のケースを読んで、リソースについて考えます。ここでの学びは、リソース=お金だけではなく、ネットワーク、経験など、あらゆる観点で考え、使えるものは使うというスタンスです。
4_人的要素とチームの正統性
人的要素(Human Factor)とチームの正統性(Legitimacy)について学びます。授業では、米国版「マネーの虎」である「Shark Tank」の映像を題材に、アントレプレナーにはどんな資質が必要なのか考えました。
また、スタートアップに正統性(Legitimacy)を与える要素を、メンバーのスキルやバランス、投資家の実績、外部顧問、事業環境、タイミングなどの観点から考えました。正統性とは、説得力と言い換えても良いかもしれません。
例えば「スペースX」は、イーロン・マスクさんが起業しましたし、民間が宇宙産業に進出するタイミングでもあり、NASAのメンバーが加わっています。なんだか説得力満載で、いかにも成功しそうですね笑。
この回の締め括りとして、正統性や実現可能性をどうアピールし、投資家を説得するかについてハンズオンで2つ実践します。
ピッチ動画
3分のピッチ動画を作成して投稿。投稿について各自がコメントします。
出資交渉
カーシェアリングのケース(Zipcar)を読み、2チームに分かれて出資交渉をします。スタートアップは資金調達が必要で、ベンチャーキャピタルは投資先を探す中での真剣な交渉です。
5_ビジネスモデル
顧客に提供するバリューはバリュープロボジションキャンパスを使いましたが、その価値を届けるためのビジネスモデルを考えます。
ビジネスモデルキャンバス(BMC)
リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスのスタートアップ版です。ビジネスの設計図のようなもので、チームで共通の認識を持ち、強みを強化したり、弱点を補強するためのツールとして使えます。
具体的には、9つの要素からなる1枚のシートです。詳細は下記の記事をどうぞ。
こちらのフレームワークも実践で学びます。先ほどカーシェアのケースを元にグループでまとめて、さらにクラスでディスカッションします。
それに加えて、自分たちのアイディアでフレームワークを使い、プロダクトとビジネスモデルを考えていきます。
ケーススタディ+自分たちのアイディアという2段構えで、ハンズオンで学んでいきます。
6_リーンスタートアップからスケール
ここでは、PMF (プロダクトマーケットフィット)が終わったあとの、スケールについて学びました。
*プロダクトマーケットフィットとは、顧客の課題を満足させるプロダクトを提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態のこと。 略称は「PMF」。
PMFが達成できたかどうかは、明確にわかるとのことで、顧客から問い合わせや要望が殺到し、マーケットからプロダクトがプルされている(引っ張られている)状態のことだと学びました。
7_すぐに消える競争優位性
デジタル化が進む世界では、Competitive Advantage(競争優位性)を維持できる期間が短くなっており、そうした状況に対応するためのTransient Advantageを学びました。
大企業であってもリーンスタートアップの手法を使いながら、高速でトライ&エラーを繰り返し、新たな価値を生み出していくことを、米国3M社のケースをもとに学びました。
3Mは、イノベーションが得意な会社として有名ですね。勤務時間の15%を自由に使っていい制度、発売から5年以内の新製品が、売上に占める割合を35%以上を保つことなどの仕組みができています。
Transient Advantage is the notion that companies must learn to launch new strategic initiatives again and again, as well as create a portfolio of advantages that can be built quickly and abandoned just as rapidly.
Leaders must recognize that in current times, fast and roughly right decision making must replace deliberations that are precise but slow.
引用:https://www.mbabrief.com/what_is_transient_advantage.asp
8_ファイナルプロジェクト
起業家と投資家の両方の観点から、ファイナルプロジェクトに取り組みました。
起業家目線
自分たちのプロジェクトについて、投資家に向けたピッチ資料と20分のピッチ動画を作成し、投稿します。クラスメート(投資家)とのQ&Aセッション(授業と掲示板両方)を授業で行います。
REALITY ACCELERATOR
投資家目線
投資家として、割り当てられた1つのプロジェクトの投資判断をします。不明点はQ&Aで解消し、積極的に投資したい、投資したい、条件次第で投資、投資しない、という結論と理由をレポートにまとめました。
おわりに
今回の授業はとても実践的でした。自分たちのプロジェクトについて、Problem、Solution、中間ピッチ、ビジネスモデル作成、最終ピッチと、一連の流れを全て経験できたのはとても良かったです。同時に、投資家の立場から、スタートアップチームとミーティングをしたり、Valuationや投資判断を擬似体験できたのも良かったです。
Period1から振り返ってみると、必修授業でアントレの科目がこれほど充実しているのは、IEの特色だと思いました。
次に、5週間で集中して学ぶ、Startup Labについて紹介します。