IEではコロナの影響もあり、8月にサマープログラムが開講されており、ポストコロナの世界をテーマに、イノベーション、リーダーシップ、DXといったテーマを短期集中で学んでいます。
今回の記事は、その中の「Agile: Values, Principles & Frameworks(変化の激しい時代に対応するには?)」について紹介します。「最小のCostで最大のBenefitを!」というアジャイルやリーンの考え方を、この授業では一貫して学びました。
Software is eating the world.
現代は、「ソフトウェアが世界を席巻」しており、「伝統的な産業がどんどんDusrupt」されていく、変化の激しい時代です。こうした現代で押さえておくべき、必須のキーワードを学びました。
指数関数的な時代
現代は、過去の延長線上ではなく、指数関数的に成長を遂げていく時代に突入しました。インテルの創業者が提唱した、ムーアの法則(半導体の性能が18ヶ月で”2倍”になる)も指数関数の考え方ですね。
指数関数的な成長を可能にしたのが、ソフトウェアです。そして、ソフトウェアの力で急激に成長する企業のメカニズムを解き明かしたのがこの本です。ウーバー、エアビー、テスラなど具体例が豊富です。
VUCA(激変する時代)
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭をとった造語で、社会環境の複雑性が増し、想定外の出来事が起こり、将来予測が困難な状況を意味します。
ここでは、VUCAに対応するための「リーンスタートアップ」の手法が紹介されました。
リーンスタートアップとは、コストをかけずに最低限の製品・サービス・機能を持った試作品を短期間でつくり、顧客の反応を的確に取得して、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法になります。
当ブログ「スタートアップラボ体験記」より
この本は、何人もの教授から紹介されている、オススメの本です。
プロジェクトの時代
コロナの影響もあり、「会社単位」から「プロジェクト単位」の仕事へ、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」の雇用へ、働き方や組織のあり方が急激に変化していますね。こうした「プロジェクト」を進めるに当たってのポイントを学びました。
プロジェクトの成功
まず、プロジェクトの大半(一説によると8割)が失敗すると言われます。これは次のトライアングルから説明ができます。プロジェクト準備段階では、「時間」「リソース」「機能」を全て満たす理想の計画が立つのですが、プロジェクトを進めていくと必ずどこかが足りなくなるからです。
途中で何かを捨てるという判断ができれば、プロジェクトは成功に近づきますが、現実から目をそらし、意思決定できずにズルズルと進んでいくと、最後は必ず失敗します。
どうすれば失敗を避けられるのか。これは「リーンスタートアップ」や「アジャイル開発」のように、「優先して開発すべき機能を選択」し、「時間とリソース」をそこに注ぎ込むことです。
プロジェクトの進行具合=現実を受け入れ、優先すべき機能から開発していけば、時間切れになったとしても必要な最低限の完成しているはずです。
プロジェクトには計画の修正がつきもので、「このままだとどれくらいの時間とコストがかかるか(現実を受け入れ)」、「現状のリソースで取れるベストのオプションは何か」という2つの問いを常に持ち続けることが必要ですね。
このように、プロジェクトの成功にはリーダーの意思決定がとても重要で、意思決定のメカニズムを解き明かしたこの本が、教授からお勧めされました。
本書の内容:人の思考には早い思考(ファスト)と遅い思考(スロー)の2種類あり。過去の経験則に基づく、ファスト=直感は結構正しいことがわかっているが、いくつかの欠点があるので、重要な意思決定にはスローも使うべき。
2種類のリスク
(デジタル)プロジェクトには、ビジネスリスクとテクノロジーリスクがあります。どちらに問題があるかを認識することが大切ですが、一般的にはビジネスリスクの方が不確実性が高く、難しいと言われています。
失敗のコスト
優先すべき機能からどんどん開発していくべきですが、それでも失敗は避けられません。その時に必要な考え方が失敗のコスト(エラーコスト)です。時間が経つにつれて、失敗のコスト(修正・やり直し)が指数関数的に増大していますね。
じゃあどうすべきなのか、「Release early, Release often」という、短期間でリリースと修正を繰り返していく、アジャイル開発が有効になります。ここまで来れば、「なぜアジャイルなのか?」がわかったと思います。次からアジャイル開発の説明に入りましょう。
アジャイル(素早い)
アジャイル開発とは?
アジャイル開発は、システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていきます。
従来のウォーターフォール型が悪いのではなく、アジャイルかどちらかに決めるというのが大切です(中途半端が最悪)。
アジャイル開発の原則
注意すべきは、アジャイル開発とは単なるフレームワークではなく、価値であり、原則であることを認識することです。あくまで中心は人間であり、モチベーションが何よりも大切です。
いくつかの重要な原則がこちらです。
- 最小のCostで最大のBenefitを!
- コラボレーション(ビジネスと開発チーム)
- MVP(最低限の機能で試すこと)
- 二八の法則(重要な2割の原因が、全体の8割の結果を生み出している)
- Less is more(後述)
「選択肢が多ければ多いほど、人は不幸を感じやすくなってしまう」という、この本で紹介されている研究結果からも、「必要最低限の機能でローンチし、少しずつ試していく。価値を生み出す最低限の機能に注力する。顧客が求める価値を特定する」と言ったことが必要ですね。
参考:アジャイルソフトウェア開発宣言
「アジャイルソフトウェア開発宣言」には、「アジャイル開発を進めるためのマインドセット」が書かれています。
アジャイルの具体的な手法
アジャイルがなぜ必要なのか?、アジャイルとはどのようなものなのか?という、WhyとHowに時間をかけてきましたが、ようやく具体的な部分(What)に到達しました。
スクラム
授業では、アジャイル開発の代表的な手法である、「スクラム開発」について学びました。“チームのコミュニケーションを重視した手法”であることが特徴になります。一から説明すると記事がとんでもなく長くなるので、一番わかりやすい外部サイトを紹介しまう。
geechs
Google式のアジャイル開発が紹介された本もオススメです。
おわりに
教授からは、「最小のCostで最大のBenefitを!」、「アジャイルはテクニックではなく、バリューそのもの。人々のモチベーションが一番大事!」と強く言われました。こうしたリーダーシップや、アジャイルの背景にある「世界の変革」を大きな視点で扱った、「MBAらしい」授業でした。
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