MBAのエッセンスを独学で学ぶカリキュラムをシリーズで紹介していますが、今回は、実際の企業のケーススタディを読み解いていく第3弾です。
今回の参考図書は、IEビジネススクールと一橋ビジネススクールの両教授が編纂した、グローバル化とその中でビジネスが果たす役割についての15のケースが収録された本です。
ここからは、自分のメモの要素が強くなりますが、大事だと思うこと、キーワードを中心に記していきます。引用部分は『』で表します。15ケースは長いので、3ケースごとに5つの記事に分けます。
Movile:持続可能でイノベーティブな文化
次はブラジルの企業で、モバイルアプリを提供するMovileです。PlayKidsという子供向けアプリで成功し、その後のM&Aを通じて、現在は4つのセグメントで事業をしています。
- Content creation and distribution (PlayKids app)
- Food ordering and delivery (iFood app)
- tickets booking
- logistics intermediation
Movileのビジネス拡大の歴史は省略し、拡大の秘訣である企業カルチャーについて見ていきます。『Gente FIRME』(=FIRMEな人たち)というスローガンがあり、企業理念が定められています。失敗を恐れない、顧客第一などです。またLean startup manualがあり、『Try fast, launch fast, fail fast』という考えで、いくつかのアプリを同時に開発してローンチし、その中で有望なものを育てるという発想です。
そして組織構造もシンプルで、12のDirectorがCEOに直接報告します。そして会社全体のゴールと現在の数字がダッシュボードでリアルタイムに表示されているところがユニークです。こうした数字は共有され、部署レベル、個人レベルまでブレークダウンされます。
さらにユニークなのが、買収した企業の取り扱いで、買収元のCEOに自由にやらせる一方で、目標とそれに対する戦略の策定は、一緒に綿密に実施し、それが企業文化の融合につながっていく部分です(Movileは目標設定と戦略策定はかなり綿密に行い、毎月徹底的なレビューをやる仕組みがあるそうです)。
最後に、立ち上がったばかりの市場はスケールアップ、グローバル競争力、イノベーションとスピードがKSFであり、Movileはそれがあると述べられて終わります。
Delphi Automotive:倒産からの復活
次のケースは、米国の自動車部品メーカー(Tier2)のDelphi Automotive(現在の名称Aptiv)です。元々は米国自動車メーカーGMの関係会社でした。1999年にGMから独立して上場したが、2005年に破産。しかし見事な復活で現在は順調に利益を上げ、拡大しています。なぜ復活できたのか?どういう施策を打ったのか?というのがこの章のテーマです。
まず倒産の理由ですが、高い労務費と強い組合(による高い労務費)でした。この会社は3つの戦略(Mega-trends, Internationalization, Divestitures of non-core products and divisions)を元にReorganizationしました。
Mega-trendsはSafe, Green, Connectedです。DivestituresはNon-coreビジネスを閉鎖or売却することです。そして重要なのがInternationalizationです。注意したいのが、倒産前でもすでにこの会社は世界中に工場を持っていました。大事なのはInternationalizationによって組織の効率(organizational efficiency)を上げること、Low-labor costだけを追求するのではなく、Best costという観点でフレートなどを含めたTotal costを見るということです。逆に、未熟な国際化は組織の効率性を下げるとも書かれています。
最後にまとめがあります。リーマンショックがこの会社のreorganizationとredesignを促進した。国際化のタイミングとスピードが大事であり、国際化はMega-trendsやノンコア事業の切り離しを伴って初めて効果が出る。Best-cost countryの視点が大事で、cost-driversの綿密な調査が必要。技術的多様性は、国際化と文化的多様性によって生み出される。
Cineplanet:南米市場での拡大
CineplanetはペルーのシェアNo.1シネコン企業です(日本でいう東宝シネマズ)。チリなど他国への進出もしており、今後の海外進出について社内で熱い議論が交わされています。今回のケースは、CEOが次の取締役会に向けて、他国への進出を分析、検討するさまを疑似体験できるようにデータや情報が提示されます。
開示されるデータとして、Cineplanetの現在の状況を俯瞰したあと、市場(GDPや人口、5Fなど)、競合(シェアなど)、自社という3Cのフレームワークに沿って説明があります。
次いで、各国の状況が提示されます。候補はブラジル、コロンビア、ベネズエラ、エクアドルです。南米の市場というのは、会社に入って一回も考えたことがなかったので新鮮でした。MBAのケースは世界中の企業が題材なため、こうした新たな視点を得られます。
情報提供の後には、CEOに場面が戻り、CEOが考える重要なイシューが紹介されます。なぜ海外に進出すべきなのか?南米市場は魅力的なのか?リスクは?文化的・地理的要素は重要か?他に分析すべきことは?どの国を選ぶ(選ばない)べきか?それはなぜか?
こうしたイシューは実際に自分が同様のケースに直面した時に、考えるべきものですね。真剣に検討し、クラスメートと議論するのは、疑似体験とはいえ意味のあることなのかなと思いました。
最後に、新市場への進出はChallengingであり、Carefullになるべき、なぜなら(同じスペイン語圏であっても)消費者の嗜好は全然違うからだ。そしてシネコン業界は課題だらけだが、会社や業界のTransformには強いリーダーシップが必要だ。というまとめがされている。
3/5のまとめ
前回に続き、企業のケースを3社読んだ。経営コンサルタントの方などは色々な業界の案件に携わると思うが、私はメーカー勤務なので自社の案件しか基本的に携わらず、視野が狭くなっているなと感じた。ケーススタディは視野を広げるという意味もあるのかなと思いました。