IEに入学し、6ヶ月間のCore Period(必修)、5週間のLab Periodを終えると、残りは3ヶ月のElective Periodに突入します。100以上の選択肢から、自分の学びたい科目を取ることができます。
そこで今回は、「Financial Modeling」の授業内容を詳しく紹介します。
以上の内容を、実際に授業を受けた私が詳しく説明していきます。
カリキュラム概要
このクラスは、毎回2コマ連続(80分×2)で行われます。授業では教授の見よう見まねで財務モデルを作り、完成させるのが授業中のゴールです。その後、ほぼ毎回宿題が出て、悩みながら自分でモデルを作成できるようにトライします。
投資銀行出身の教授のもとで、実際に現場で使われているようなモデルを作成していきます。
1. イントロダクション
Financial Modelとは?
ビジネスプランとは、あなたが勝つための「ストーリー」ですよね。こうしたストーリー(言葉)を数字に落とし込んだのが、「Financial Model」になります。そしてFinancial Modelは、売上や成長率といった「変数」を変えながら、複数のシナリオを比較・検討できることが必要です。
基本的には財務三表を作れるようになることです。BSからPLを作り、CFを計算して再びBSに反映させる。
GOOD Financial Modelの条件は?
- Flexibility(修正がしやすい)
- Visibility(誰が見てもわかりやすい)
- Organization and Design(使いやすいように整理整頓されている)
- Depth & Realistic(現実を反映している)
- Formating(色や形を含むフォーマットが統一されている)
- Simplicity(シンプルである)
- Formula(数字のベタうちではなく数式をなるべく使う)
とことん考え抜き、洗練されたモデルが要求されます(教授のフォーマットの丸パクリからスタートです)
2. 個別トピック(基礎)
モデル作成の際に、特に注意すべきトピックを個別に学んでいきました。
固定資産
有形固定資産(Property, Plant and Equipment = PP&E)と無形固定資産(Intangible Assets)の増減を計算します。増加は投資、減少は償却ですね。
運転資金
キャッシュの変動を考慮に入れる必要がありますよね。ここでは、「キャッシュコンバージョンサイクル(仕入から販売による現金回収までの日数)」の考え方を学びました。
株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)は、次の式で表されます。
- CCC = DSO + DIO – DPO
- DSO 売上債権回転期間(日)= 売上債権 ÷ 売上高 × 365
- DIO 棚卸資産回転期間(日)= 棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365
- DPO 仕入債務回転期間(日)= 仕入債務 ÷ 売上原価 × 365
EquityとDebt
Equityについては、当年度の利益を足して、配当分を引けばOKです。
Debtについては、元本返済分と利息を計算してモデルに反映させます。また「レボルバー(運転資金)」を計算します。これは通常の借入でいう運転資金融資で、 買収ファイナンスでは特に一定期間の融資枠を設定することで、その枠内で何度でも実行可能としています。
3. 個別トピック(応用)
Tax Assets and Liabilities
次にややこしいのが税金関係です。税金は発生した時期と支払い時期がずれたり(翌期に支払い)、免税や減税などがあるためモデル作成の時には注意が必要です。具体的には「繰越欠損金」の計算をしました。
繰越欠損金とは、単年度の課税所得がマイナスとなり税務上の欠損金が生じた場合、翌期から一定期間の課税所得を減額することができます。繰越欠損金とは、この制度により将来に繰り越す欠損金のことをいいます。
Equity Investments & Non Controlling Interests (NCI)
さらにややこしいのが、株式関係です。100%であれば計算しやすいのですが、一部の株式を保有しているパターンなどはきちんと計算する必要がありますね。
Non Controlling Interest(非支配株主持分)は、少数株主持分のことで、子会社の資本のうち親会社の持分以外の部分を意味します。
4. Financial Analysis
分析の基本
分析は主に企業の5つの力を見極めるために行います。
分析の基本は比較することですね。比較するときに3つの指標があります。
- 会社内での比較
- 業界平均との比較
- 他の会社との比較
分析のゴール、比較対象ときたら、次は分析のツールです。
- Vertical(ある年度の売上→費用→利益と言ったように縦に分析)
- Horizontal(売上の3年間の推移と言ったように横に分析)
- Ratio(比率分析)
Verticvalはパーセンテージで表されることが多いです(利益率など)。Horizontalはトレンド分析ともいい、増減とその理由を突き詰めていきます。Ratio分析は多くの指標がありますね。
5. M&A
ここでは、M&Aの基礎を学び、それからモデル作成にとりかかります。
M&Aとは
M&AはMarger(2つ以上の会社が1つに統合される)とAquisition(譲渡企業の株式の過半数を買収することで、経営権を得る)の略ですね。
なぜM&Aなのか?
買い手の目的は、規模の経済/マーケットシェア拡大/新事業や新規マーケット進出などが考えられます。買収戦略を描くこと、デューデリジェンス、バリュエーション、財務上は現れない部分(ノウハウや人など)が買い手側の課題になります。
売り手の目的は、後継者がいない/変化に対応できない/ガバナンスの問題/高値で売り抜けたいなどがありますね。売り手側の課題は、売却戦略(なぜ売るのか?想定される買い手は?値段は?)と財務的な対応をきちんとすることですね。
そして買い手と売り手の両方の課題は、クロージングの後、いわゆるPMI(Post Merger Integration)になります。
モデリングではEPS(1株当たりの純利益)が変動するかどうかを計算し、反映させました。
M&AによるBSの変化
M&Aでは必要資金の使い道(株式買収、アドバイザーフィーなど)と必要資金のソース(新株発行、新規借入、既存現金など)を計算し、BSに反映させます。
EPS希薄化分析
こちらも計算をしてモデルに反映させることが求められます。M&Aによって、既存株主のEPS(1株当たり利益 = 当期純利益 ÷ 発行済み株式総数)がどれだけ変化(増大 or 希薄化)するかを分析します。
LBO
M&Aで使われる手法のLBO(Leveraged Buyouts)について授業で触れられ、モデルに反映させました。
DoM&A
6. Final exam
今まで学んできたことをベースに、モデルを作るのが試験の内容です。
内容を理解するのは難しくありませんが、自分でモデルを作るには実践練習が必要です汗
おわりに
この授業は最初から最後までエクセルでひたすらモデルを作り続けるという内容でした。独学でやるのはしんどいだろうなと思って選択したので、結果的には大満足でした。留学中の方、留学を検討されている方は、是非入学したらモデル作成の授業を選択してみてはいかがでしょうか。
今回の記事でファイナンスは終了です。次からは人事・組織がトピックです。