今回は、IE Business SchoolのPeriod1で学ぶFinancial Accounting(財務会計)の授業を紹介します。
この授業の目的は、ビジネス界の「言語」であるアカウンティングの基礎を理解することで、具体的には3つです。
・財務三表(PL、BS、CF)と三表の関係性の理解
・企業の経済活動の記録(簿記)の理解
・財務諸表やアニュアルレポートの分析と、資本市場への役割や影響
よくわかる!キャッシュフロー計算
カリキュラム
9つのパートに分けて紹介します。全体概要、会計サイクル、IFRS、売上原価と棚卸資産、売掛金と買掛金、資産、キャッシュフロー、倫理、の順です。
1_全体概要
財務諸表の概要を学びます。
・財務諸表の目的は、幅広いステークホルダーが意思決定をするための有用な情報を提供すること
・財務三表を、簿記を使いながら細かくみていきます(例:資産=負債+株主資本、収益-費用=利益、3つのCFなど)。
*まずは会計の原則(発生主義・現金主義・実現主義)をここで押さえましょう。
Freee
もう2つ、費用収益対応の原則と継続企業の公準(ゴーイングコンサーン)も押さえましょう。
グロービス経営大学院
白石茂義公認会計士事務所
2_会計サイクル
取引の発生から、財務諸表の作成、最終的な帳簿の締切まで一連の流れを、会計サイクル(Accounting Cycle)といい、複式簿記を通じて学ぶことになります。
Lighthouse
Freee
3_IFRSとNon-IFRSの違い
まずは国際会計基準のIFRSについて押さえておきましょう。
経理プラス
授業ではiphoneの会計基準変更のケースを取り上げて、こうした変更は会社のマネジメントが意思決定をする(監査法人等とも相談しながら、ルールの中で各会社が決めることができる)ということを学びました。
4_売上原価と棚卸資産
この回では、売上原価と棚卸資産(在庫)の計算方法、棚卸資産の評価損(益)について学びました。売上原価=期首在庫+仕入在庫-期末在庫でしたね。
ビジドラ
*先入先出法、後入先出法、個別法、総平均法それぞれの計算方法を理解します。
スモビバ
*棚卸資産の評価方法の原則の一つ、低価法についても学びます。
PASONA
棚卸資産の指標として、下記の2つは押さえておきましょう。
・棚卸資産回転率(回) = 売上原価 ÷ 棚卸資産
・棚卸資産回転期間(回転日数) = 棚卸資産 ÷(売上原価÷365)
5_売掛金と買掛金
まずは概要を押さえましょう。
経費の教科書
ここでは2つの指標を押さえましょう。
・売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権売上
・売上債権回転期間(回転日数)= 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 365)
引当金についてもここで学ぶことになります。
NOC
6_資産(資本、負債)
①資産
まずは設備投資と減価償却について押さえましょう。減価償却は、定額法、定率法、生産高比例法、倍額定率償却法の各種方法と、利益と税金インパクトを学びます。
Consultoria
次に有形固定資産と無形固定資産の違いについて学びます。
Money Forward Bizpedia
ここでは、のれんや減損なども学びました。
株式会社STRコンサルティング
指標は下記の2つを押さえましょう。
・総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
・総資産回転期間(回転日数) = 総資産 ÷(売上高÷365)
②負債
負債は1年以内か否かという基準で、短期負債と長期負債があります。短期負債については、既に学んだ買掛金も含まれます。同じく引当金についても、再度出てきます。長期負債のところでは、社債やリースについても学びます。また、データ分析の授業でも出てきましたが、現在価値(Net Present Value)の考え方も理解しましょう。
*社債は債券価格と金利(利回り)についても学びます。
資産運用完全ガイド
*リースは「オペレーティング・リース」と「ファイナンス・リース」があり、両方とも貸借対照表に記載する必要があります(IFRSの2019年改定により)。
経理ドリブン
負債関係の指標は次の3つを押さえましょう。
・負債比率 = 負債 ÷ 総資産
・DEレシオ = 負債 ÷ 株主資本
・インタレスト・カバレッジ・レシオ =(営業利益+金融収益)÷ 支払利息
③運転資本(ワーキングキャピタル)
運転資本はキャッシュフローにも関わる重要なポイントですので、復習しておきましょう。
GLOBIS 知見録
④株主資本
ここでは主に資金調達の観点から、株主資本と負債の違いについて押さえます。どちらもメリットとデメリットがありますね。アントレの授業でも、ロールプレイをやりながら資金調達について学びましたね。ここでは、普通株式だけでなく、自己株式、配当金、株式分割、資本金、資本剰余金までざっくりと理解しておきましょう。
ここでの指標は1つだけ押さえましょう。
・EPS = 税引後当期利益 ÷ 発行済み株式数
7_キャッシュフロー
アカウンティングについて一通り理解したあと、最後の大物キャッシュフローについて学ぶことになります。
営業CF、投資CF、財務CFについては説明を省きます。また営業CFついては、純利益から逆算して計算できるようになりましょう。
8_財務諸表の分析
ここでグループ課題が出されました。企業を一つ選んで分析し、最終的に投資判断(Buy, Hold, Sell)をするお題です。この課題を通じて、企業の定性的な分析(政治や経済などの外部環境、市場や競合や自社の強み弱みなどの内部環境)と、定量的な分析(財務諸表やアニュアルレポート、指標分析)をハンズオンで学ぶことになります。
*定性的な分析はPEST、3C、SWOTでまとめました。
アクティブブログ
*定性的な分析は、指標分析が大きなテーマの一つでした。
法人税申告・決算サポートセンター
生まれて初めて南米の会社を分析しましたが、ハイパーインフレや砂糖税など日本では考えにくい視点から分析できたので、楽しかったです。
9_アカウンティングと倫理
過去の大事件を振り返り、監査法人の役割とアカウンティングの倫理的な側面について触れて終了です。
The Fraud Triangleとして、Opportunity、Incentives、Attitudesの3つが揃うと危険とのことです。
おわりに
この教科は、学生によって事前知識が大きく異なる中で、教授のもやりにくかっただろうと思います。概要から細かい部分までやるので、自分がどんな目的でどこまで学ぶのかを明確にしないと、費用対効果が薄れると感じました。
Period1の授業では概要を学びました。Period2では管理会計「Managerial Accounting」を学びます。Electiveでは、「Financial Statement Analysis」、「Sustainability Accounting」、「Financial Instruments & M&A Accounting」などの授業が盛り沢山なので、自分で深めていくことができます。
次は、社外に説明するための財務会計に対して、社内で計画・管理・意思決定をするための管理会計(Manegerial Accounting)に進んでいきましょう。