IEビジネススクールのMBAは、基本的に1年間のコースになりますが、最初の6ヶ月はCore Period(必修)、その後5週間のLab Periodを終えると、残りは3ヶ月のElective Periodになります。100以上の授業から、自分の学びたい科目を取ることができます。
今回は、私が選んだ8つの中でも最も実用的な「BUSINESS STORYTELLING」の授業内容を詳しく紹介します。
この記事を読めば、ストーリーテリング準備から本番までの15のステップを学ぶことができます。
ストーリーテリングは苦手意識を持つ方が多いかもしれませんが、テクニックなので練習で上達できます。実際に授業を受けた私が、15のステップを詳しく説明していきます。
授業の目的
この授業の目的は明確で、「プレゼンテーション」と「パブリックスピーキング(スピーチ)」の理論を徹底的に学び、スキルを向上させることです。
授業自体は、次に紹介する「ストーリーテリング15のステップ」に沿って授業が進みます。ストーリーテリングのメソッドを学びながら、徐々にスライドを完成させていきます。中間発表3回と最終発表があり、同じ内容を4回発表することになります。
習った内容を自分のプレゼンにすぐさま反映という、とても実践的な内容です。
アリストテレスが提唱した説得力の構成する3つの要素、「信頼性(エトス)」 「情熱(パトス)」 「論理(ロゴス)」は前提知識なので、知らない方はググっておきましょう。
ストーリーテリング15ステップ
まずは自分を認識して、マネジメントすることから始まります。自分の強み、弱み、性格を理解し、自分が輝ける場所を見つけることが大事です。
1. テーマ
プレゼンのトピックを選びましょう。自分の「信頼性(エトス)」が出せるかどうかがポイントです。トピックは広すぎず狭すぎず、オーディエンスの知識レベルとプレゼンの持ち時間に応じて調整していきましょう。
2. オーディエンス
オーディエンスを知ることがプレゼン成功の鍵です。4つのポイントに気をつけましょう。
- 彼らは何者か?
- 彼らの知識レベルは?
- 彼らが(プレゼンに)期待することは?
- 彼らが抱くであろう疑問は?
具体的な人物像(ペルソナ)まで落とし込んでみてもOKです。
3. オーディエンスジャーニーマップ
オーディエンスジャーニーとは「Point A(出発点)」から「Point B(ゴール)」への流れになります。詳しく説明します。
Point Aとは、彼らが直面している課題(Challenge)のことで、Point Bとは、彼らが実現したい状態(目指す場所)になります。プレゼンでは、どうやってPoint AからBへ行くのか(Solution)を、ベネフィットを伝えながら説明していきます。Solutionは、製品やサービスであることが多いですね。
4. スピーカーのゴール
話し手のゴールを明確にしましょう。明確なゴール・目的がなければ、プレゼンは成功しません。
5. 時間
どれくらいの時間があるのでしょうか?100%の時間を使い切るのではなく、10〜15%ほどは余裕を持っておくことで、本番でも慌てずに対応できるのでおすすめです。
6. リサーチ
プレゼンのためのリサーチをしていきます。トピックについて関連するファクトを集めていきましょう。一次情報と二次情報を組み合わせることが大切です。
- 人から情報収集
- 公開情報で情報収集
リサーチ結果は使いやすいように、情報と引用先(リンクなど)をまとめておきましょう。
7. 内容
プレゼン内容を考えていきます。コツは、ブレストやマインドマップを使ってアイディアを発散させてから、絞り込んでいくという順番を守ることです。この時に、情熱(パトス)」 「論理(ロゴス)」も考えていきます。
ポイントは、Wiify(What´s in it for you?)を考え抜くことです。これは「あなたにとってのメリットは何?」、聴衆からすれば「私にとってのメリットは何?」です。全てのスライドでWiifyを設定し、Feature ではなくBenefitで訴えかけるようにしましょう。
情報を詰め込みすぎたプレゼンをよく見かけませんか?
Less is Moreの考え方で、内容を研ぎ澄ませていきましょう。
8. Structure
ストーリーテリングの構成テンプレートです。これに沿って作れば、誰にもわかりやすいストーリーが出来上がります。
- Icebreaker(アイスブレーク)
- Setting([観客] あなたは何について話すの?)
- Audience Role ([観客] ストーリーの中で私は誰で、どんな役割がある?)
- Point A([観客]私が直面する課題は?出発点は?)
- Point B([観客]私はどうなりたいのか?どこに到達したいのか?)
- Roman Column 1-3([観客にとっての]3つのベネフィット)
- Call to Action(観客がとるべきアクション)
プレゼン課題の初回は、下記のようにスライドタイトルだけで、5分間発表するという課題でした。1.テーマ〜9.構成までに注意しながら、全体のストーリーを作っていきます。
9. Narrative
Narrativeは物語と訳されますが、スピーチ内容、突き詰めるとスピーチ原稿のことです。必ず原稿を作って練習をしましょう。
10. ビジュアル
ここでは、美しく見やすいスライドについて学びました。各スライドのラフなスケッチを書く→パワポで作り込んで行くという順番です。内容は、サマープログラムのパワーポイントデザインの授業に近いので、記事を紹介しておきます。
4回の課題のうち、スライド(ビジュアル)を作っていいのは最後の2回だけでした。実際のプレゼンでもデザインを作り込むのは最後の最後です。
11. 言語化
流れるようなストーリーにするには、つながり(Linkage)がとても重要です。スピーカー側の内部のつながり(ストーリーやロジックなど)と聴衆との外部のつながり(名前を読んだり質問など)の2種類のつながりがあり、どちらも重要です。
テクニックが多すぎてまずはメモしておきます(解説は後日追記します)。
内部のつながり(ストーリーやロジックなど)
- Reference the Flow Structure
- Logical Transition
- Cross-Reference
- Rhetorical Question
- Recurring Theme
- Bookends
- Mantra
- Internal Summary
- Enumeration
- Do the Math
- Reinforce Point B
- Say your Company Name
外部とのつながり(オーディエンス)
- Direct Reference
- Mutual Reference
- Ask Questions
- Contemporize
- Localize
- Data
- Customized Opening Slide
3回目のプレゼン課題になってくると、内容がかなり洗練されてきます。最終プレゼンではに向けて、13.以降の、本番を意識した作業に入っていきます。
12. ステージ
本番の会場を意識して、自分がどこに立ち、オーディエンスがどこで聞くのかを確認します。最近はオンラインでも発表の機会が多いと思うので、その場合はオンライン用の対策をしましょう。
13. リハーサル
とても発表が上手な教授から、最低7回は練習しろ!とお達しがありました。
14. 発表(本番)
自分の発表スタイルを知ることが大切です。安定しているのか、即興に強いのか、軽快な語り口か、自分のスタイルにあった発表ができるといいですね。アイコンタクト、笑顔、沈黙などを使いながら、オーディエンスとのつながりを作り出しましょう。
15. 即興
起こりうる事態を予測し、事前に準備できるところはしておきましょう。とはいえ、本番ではフレキシブルに対応することが求められますね。
フィードバック
ストーリーテリングは終わりのない改善が大切です。発表が終わるたびにフィードバックを自分から取りに行きましょう。
- 構成は?
- 効果的な発表だったか?
- ボディーランゲージ、声、スピードはどうか?
- ストーリーは?自然だったか?わかりやすかったか?
発表ごとに、3人のクラスメートにフィードバックを書く課題がありました。つまり私も合計4回、12個のフィードバックをもらうことができました。
史上最高のビジネスピッチ
この授業でお手本として使われたのが、スティーブ・ジョブズの初代iPhone発表のピッチです。長いですが、神がかっているので見てみることをオススメします!
おわりに
この授業の目的は、「プレゼンテーション」と「パブリックスピーキング(スピーチ)」の理論を徹底的に学び、スキルを向上させることでした。
「ストーリーテリング15のステップ」に沿って学び、4回の実践を通じて、私のスキルはかなり上達したと思います。
次のプレゼンの機会に、15のステップを試してみてはいかがでしょうか?
次の記事からは、アントレプレナーシップがテーマです。