今回は、IE Business SchoolのPeriod1(最初の3ヶ月)で学ぶ、Innovation in a Digital Worldの授業を紹介します。
この授業は、ビジネスリーダーが押さえておくべきポイントを短期間で一気に教えてくれるという授業です。エンジニアやIT専門家向けの内容ではなく、初心者でも無理なく身に着けることができるように設計されています(大量のリーディングや課題をこなすことが前提ですが…)。
カリキュラム
以下、6つのパートに分けて紹介します。
1_ITとDXの基礎
まずは、基礎中の基礎を学びます。IT(技術)、ITの進化とビジネスへの影響、組織内でのIT部門と事業部門の連携、ITを通じてビジネスに競争力を持たせることなど、たった2回の授業でこれだけ学びました(とても大変です笑)。
①現状把握
全ては現状把握から始まりますね。デジタルの世界の現在のトレンドやルール、プレイヤーを押さえましょう。
ルールその1:GAFA
彼らがルールであり、トレンドです笑。彼らが実際にどんなビジネスをやっていて、どうやってバリューを出し、異常な利益を上げ続けているのかを押さえましょう。こちらは参考記事、書籍、動画をいくつか紹介するので、目を通してみてください。
パーソルテクノロジースタッフ
ルールその2:第四次産業革命
イメージを掴むために、ダボス会議の動画をご覧ください。
第4次産業革命は、過去の産業革命とは比べ物にならないほどのインパクトがあります。上の動画のように可能性や自由度が無限大のため、まずは自分たちがどういう世界、社会を目指すのかを定義することが何より重要です。
コエテコ
ルールその3:デジタルストラテジー
デジタル戦略も従来の戦略と変わりがない部分があります。それはWhyから始めること。サイモン・シネックさんが提唱したゴールデンサークルが紹介されました。
hirameki
Whyに当たる部分が戦略、Howの部分がデジタル化の方向性、Whatでようやく技術(ツール)が登場します。
また、CEOのデジタル戦略へのコミットメントの重要性と、CIOの果たすべき役割をディスカッションしました(事業部門とIT部門の連携)。
2_IT(デジタル技術)
このパートではデジタル技術(Digital Enablers)に焦点を当てて学びます。キーワードはクラウド、ビックデータ、AI、ソーシャルメディア、モビリティ(モバイルデバイス)などです。8つの分野を紹介します。
*Digital Enablersの例
①クラウド
クラウドの可能性、メリットデメリットについて理解しましょう。Salesforce社の動画がわかりやすいです。
クラウドで押さえるべき概念は、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)です。
BITDAYS
②ビックデータとデータ分析
ここでのキーワードは「Data Driven Company」で、こうしたデータ分析の目的は、ビジネスでの意思決定をするためです。面白い動画が2つあるので、まずはご覧ください。
データ分析の流れは、インプット(Data)→分析(Processing)→アウトプット(Insight)とシンプルなので押さえておきましょう。
また、説明する必要もないと思いますが、ERPとCRMは理解しておきましょう。
ITトレンド
③ソーシャルメディア(SNS)
SNSによって顧客との関係も変わってきます。SNSは顧客のエンゲージメントを向上させ、ロイヤルティーを上げ、ブラント価値を向上させることができます。マーケティングの授業でも深堀りするテーマですが、NIKEやIKEAが上手ですね。
IKEAについては、彼らのSNS戦略を紹介します(PDFがダウンロードできます)。
http://thesocializers.com/wp-content/uploads/2017/07/IKEA_CaseStudy.pdf
④AIと自動化(Automation)
参考記事を一つ紹介しておきます。
FUJITSU JOURNAL
興味深かったのが、AIの活用例としてTikTokが紹介されたことです。
日経クロストレンド
⑤モビリティ
ここでは、自動車業界で使われるモビリティではなく、モバイルデバイスとモバイルサービスという意味合いで考えます。
モビリティ:ITの分野では、情報機器や通信サービス、情報システムなどが移動中や外出先で(普段と変わらず)利用できることや、その度合いの高さを意味することが多い。携帯型のコンピュータや携帯電話、無線通信などの分野でよく用いられる。
http://e-words.jp/w/%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3.html
現在のモビリティの中心は、スマートフォンですね。中国のBaidu、Alibaba、Tencentの通称BATは、スマートデバイス向けのサービスで成長しました。
CNET Japan
モビリティによって重要になってくるのが、O2O(Online to Offline)という考え方です。いかにオンラインからオフラインにつなげるか。e-commarceが盛んになってきているものの、実際は実店舗での売上がほとんどの割合を占めていますね。
俺のクラウド
⑥IOT
動画で見るのが一番わかりやすいので、紹介します。
⑦デジタルプラットフォームとエコシステム
実例がわかりやすいと思いますので、いくつか紹介します。
⑧新たな技術
ブロックチェーンに代表される、新たな技術を紹介します。
教授が最後の授業で、「授業で習ったことはすぐに古くなる。常にアンテナを張って最新の情報をアップデートして欲しい」と言っていました。そこで、情報収集のための主なソースを紹介します。
3_DX
ここでは、主に顧客と従業員の観点からDXについて掘り下げます。参考記事を紹介します。
ECのミライを考えるメディア
4_ビジネスモデル
ここでは、新しい形のInteraction、シェアリング、e-commerceを手段として、企業がいかにバリューを提供するかについて考えます。
①Digital Disruption
まず最初に押さえるべきはDigital Disruptionです。Amazon Effectに代表されるように、既存ビジネスは変革を迫られていますね。
カオナビ
②デジタルビジネスモデル
まずは言葉の定義からみていきましょう。
Liferay
グロービス知見録
つまり、デジタルビジネスモデルとは、「デジタルとハードの技術をユニークに組み合わせることによって創造される、優位性の高いビジネス」における、「収益を生む仕組み」であり、「価値創造の仕組み」であり、「ビジネスの設計図」です。
概念よりも実例の方がわかりやすいと思いますので、GAFAの例を紹介しておきます。
ダイヤモンドオンライン
5_リスクマネジメント
デジタルは我々の世界をますます快適・便利にしてくれますが、リスクも同様に増大します。ここでは、リスクの定義からリスクマネジメントの計画・実行に至るまで、ITセキュリティ、サイバーセキュリティ、信頼とプライバシーといったキーワードを押さえながら学びます。
リスクマネジメントのプロセスはシンプルに言うと、何を守るか、すなわちどのアセット・情報・プロセスが重要なのかを決め、機会と脅威の両面を検討します。次に、リスクレベルを計算します。最後に、どれくらいのリスクを許容するのかを意思決定し、対策も実施します。
6_デジタルイノベーションと社会への影響
ここでは、デジタルイノベーションのプロセス、イノベーションモデル、オープンイノベーション、イノベーションを起こす新たな技術を学び、その社会への影響を考えます。影響を受ける主体は、ビジネス、社会、個人の3つの観点から考える必要がありますね。
では実際にどんな影響があるのでしょうか。「データの民主化」により、誰もがデータを入手することができます。また、「プライバシー」、「ジョブマーケット」、「教育」、「税金」、「政府」など、挙げきれないほどの変革が起きています。
最初に紹介した通り、あらゆる分野で影響があるからこそ、自分たちがどういう社会を目指すのか、というビジョンが何より大切です。
おわりに
この科目は、ビジネスリーダーが知っておくべきデジタル関連知識を、一気に詰め込んでしまおうという授業でした。しかし、授業でも収まりきらず、大量の事前課題と事後課題が出されました。
今回紹介したのは、授業のコンテンツのごく一部ですが、エッセンスを理解するには十分だと思います。本記事を目次としてお使い頂き、気になる部分はどんどん自分で掘り下げて頂けると幸いです。