欧州MBAのダイバーシティ事情(IEビジネススクール)

③留学中
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MBAの醍醐味は、「ダイバーシティ」ですよね。ビジネススクールは、グローバルな環境でも通用する、「グローバルリーダー」を育てる場でもあります。今回は、MBAという超ダイバーシティ環境で学ぶときに、異文化コミュニケーションで押さえておくべきポイントを紹介していきたいと思います。

IEのダイバーシティ

海外のビジネススクールには様々な国から学生が学びにきています。IEも当然ダイバーシティに力を入れており、世界中にオフィスが30アルムナイの国籍は160か国以上留学生比率は90-95%ほど(!)、国籍だけでなく業界のバックグランドも多様です。

教授もダイバーシティに富んでいます。

異文化理解力 (The Culture Map)

留学前に絶対読んでおくべき本の一つが、「異文化理解力」(原題:The Culture Map)です。著者は、INSEADの教授で組織行動学が専門のエリン・メイヤーさんです。

この本で紹介されているカルチャーマップは、著者が開発した異文化理解ツールで、「ビジネスパーソンが現場で使える武器」として、各メディアから高く評価されています。

  • 文化の違いがみえる。例えば、中国人やアメリカ人と仕事をする上で、「自分は相手と、何が、どう違うのか、どれくらい違うのか」が一目でわかる。
  • 問題が起きやすいビジネステーマが対象。例えば、プレゼンや交渉などで相手を「説得」する際に、相手の傾向や考慮すべきことがわかる。

本書では、「コミュニケーション」「評価」「説得」「リード」「決断」「信頼」「見解の相違」「スケジューリング」8つの指標があります。

引用元:http://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/124.html

下記の表の通り、日本は両極端によっているため、他国との相対的な違いを理解しておくことはとても重要です。意外と中国と日本は近い部分があります。メンタリティが似ていると言われる、ドイツと日本がほぼ正反対というのは、注意が必要ですね。

1. コミュニケーション

ローコンテクスト vs ハイコンテクスト

日本や中国、インドなどのハイコンテクスト文化は、共通点や暗黙の了解があることを前提としてコミュニケーションを取ります。メッセージは行間で伝えられることが多く、日本の「空気を読む」というスタイルが、まさにこれです。

逆に、米国や欧州など、ローコンテクスト文化は、明確で、曖昧さをなるべくなくすようなコミュニケーションをします。メッセージは言葉通りに伝え、受け取られます。よく、冗談を言った後に、「冗談だよ」と付け加えるのがこの文化の特徴です。

私の体験

日本人が、MBAの場で曖昧なコミュニケーションをしても、伝わらないことがあり、明確に何度も伝えることがとても大切です。言った言わないということが日本でも置きますが、そもそもみんな覚えていない(聞いていない)ことが多いです笑。なので、重要なことは3回言う文章にする(それも何回も)ことが大切です。

とはいえ、ローコンテストとハイコンテストが入り混じるMBAでは、「極限までローコンテスト」にしながらワークすることが大切です。

逆に米国人の同級生などは、めちゃくちゃ明確に何回も言うので、もうわかったよという時もありますが、彼らの文化背景を認識しておけば、理解できます。

遅刻や失敗の時に、これでもか!というほど説明(日本人的な感覚だと言い訳に近い?)をするのには最初面食らいましたが、説明するのがマナーというのは感じています。

2. 評価

直接的なネガティブフィードバック vs 間接的なネガティブフィードバック

日本は最も間接的にネガティブFBをする国です(タイも同様)。逆に、オランダ、ドイツ、ロシアなどは直接的なフィードバックが好まれます。

私の体験

こちらは、国の違いというより、個人として気をつければよいと思います。ネガティブFBをする時は、なるべく相手と一対一で、まずはポジティブなFB→ネガティブなFBの順番で、リスペクトを持って伝えれば良いです。逆にポジティブなフィードバックは、私は大袈裟なくらい、何回も伝えるようにしています。自分が言われるととても嬉しいので、これはかなり意識してやっています。

3. 説得

原理優先 vs 応用優先

人を説得する時に、原理を根拠に話すか、事例を根拠に話すかの違いです。これはピッチやプレゼンで使えますね。最初に、理論や背景にある原理原則を伝えてから話す文化もあれば、最初に事実や意見を伝える文化もあります。日本は米国と並び、最も応用(事例)寄りの国です。

私の体験

個人的にはあまり気付いていないポイントですが、プレゼンを聞く時に原理(理論やコンセプト)についての話なのか、応用(事実や意見)なのか意識して聞くと理解が深まると思います。

4. リーダーシップ

平等主義 vs 階層主義

権力者に対する敬意や服従のレベルを表しており、日本は最も階層主義の国の一つで、韓国もそうです。正反対にあるのが、オランダ、デンマーク、スウェーデンなど。意外と米国は、真ん中よりやや平等主義よりです。

私の体験

MBAの学生同士ではみんな平等なので特に問題はないでしょう。教授もフレンドリーでいつでも助けてくれるので、リスペクトを持って、どんどんコミュニケーションを取ると良いと思います。

5. 決断

合意志向 vs トップダウン式

意思決定をする際、どのくらいコンセンサスを重視するかです。日本は最も合意を重視し、中国は、最もトップダウンです。政治を見てもよくわかりますね。同じ国の企業でも、実際に働いている会社の決断プロセスによって、当然異なります。

私の経験

MBAのグループでは、毎日が決断の連続です。基本は合意で物事が進んで行きますが、時間がない中で、議論が煮詰まったり意見が割れた時に、論点を整理して決断をするということがとても大切です。

6. 信頼

タスクベース vs 関係ベース

信頼形成の際に、仕事のクオリティを信頼するか、人間性を信頼するか。アジアの新興国では、人間関係が重要であることが多く、意識的して仕事以外の場面で距離を縮め、信頼を築くことも必要ですす。逆にタスクを重視する文化では、個人的な関係性を過度に求めず、成果を出すことに集中します。

私の体験

MBAは両方必要です。クラスで質の高い発言をし、グループのタスクをリードし、夜もパーティで人気者。そんなスーパーマンは必ずクラスに数人います(ジェダイマスターと呼ばれます笑)。ただし、ほとんどの人はどちらか寄りだと思うので、自分の志向する方向を目指せば良いです。私はタスクで貢献することをベースに、たまに遊ぶ時は全力で遊ぶ!ということにしています。

実際、序盤に2回ほど転機がありました。寿司パーティ開催とクラブでの全力ダンスです。特にラテン系の同級生が多いので、ここで距離を縮めることができたと思います。

7. 見解の相違

対立型 vs 対立回避型

意見の対立を有益とみるか、有害とみるか。日本は最も対立を回避する国の一つです。

「対立型」の人たちは、反対意見や、意見の相違が人間関係に影響を与えることはないと思っていることが多いです。ただ、日本の企業では、反対意見を言ったりすると人間関係にもネガティブな影響を及ぼすことがあります。

私の体験

ダイバーシティとは、「多様性(違い)」が「価値」の源泉という発想なので、意見の違いはとても重要です。この際、対立ではなく違いと考えることがポイントです。丁寧な言い方をしつつも、ガンガン議論していくことが、大事だと思います。

8. スケジューリング

直接的な時間 vs 柔軟な時間

スケジュールを守るか、遅延を前提に考えて柔軟に対応するか。日本は「時間厳守」がルールですが、国によって感覚が異なります。ドイツや米国も時間厳守型になります。

私の体験

これは大変でした笑。毎日朝9時からグループミーティングがあるのですが、時間通りに始まったことは一回もありません泣。私は会議室についたら、ホワイトボードに議題を毎回書いておくことで、短い時間で終わらせることを意識していました。

また、クラスメートが課題の締め切りの延長を、教授にガンガン申し出ていることには驚きました。そしてほぼ100%その申し出は受け入れられます。

遅刻はするけれども、締め切り間近の集中力は半端ないです。

8つの観点ごとの詳細なMAPは、「BUSINESS INSIDER」の記事に掲載されていましたので、こちらからどうぞ。

文化の違いを乗り越えるために

日本の文化はご覧の通り、ほとんどが両極端です。私はこの本を留学前に読んだのですが、実際にMBAのダイバーシティ環境で過ごしていると、相手の行動の「背景」がわかって大分助かりました。

一つ注意したいのが、国や地域ごとに差はありつつも、個人によっても差があると言うことです。日本人が全員時間に厳しいか、と言うとそうではないですよね。

また、表でわかるように、日本人は特殊だからこそ、相手に自分たちの違いを伝え、MAPを使いながらGAPを埋めていくことがとても大切です。

引用元:http://o-fsi.w3.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/vbl6/post/124.html

おわりに

MBAの醍醐味はダイバーシティですが、それゆえに衝突も日常的に起こります。こうした異文化コミュニケーションのポイントを掴むことはとても大切だと思います。

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