こんにちは。今回は、MBA留学の醍醐味(!?)である、ケーススタディについて考えてみたいと思います。ケースとは?に始まり、ケースの構造、攻略法まで紹介します。
はじめに
ケースメソッドとは、ハーバードビジネススクール(HBS)が有名ですが、「ケース」と呼ばれる、ある個人や組織の特定の課題について書かれた10数ページの教材を使って行われる授業です。
事前にケースを読み込んで授業に参加し、教授はファシリテーターとして、「あなたがケースの主人公だったらどうしますか」ということを学生に徹底的に考えさせるように、議論をリードしていてきます。
今回は、私なりに考えるケースの有用性やその限界、どのように準備すれば良いのかを、IEビジネススクールでの実体験を交えて紹介したいと思います。
ケーススタディとは?
HBSのケーススタディ授業の動画がありましたので、紹介します。IEの2倍くらいクラスサイズが大きいです。
例外もありますが、ケースとは、ある組織に所属する主人公が、特定の時期(○○年○○月という書き方が多い)に、特定のシチュエーションに置かれていて(問題に悩んでいることが多い)、あなたならどうする?、と問いかけられる形で書かれています。
通常ケースには、問題 or 課題が含まれており、学生は問題を特定することから始めます。
課題を特定して、自分なりの解決策を持って授業に臨む。
それから授業でディスカッションをすることで、多様なクラスメートの考えに触れ、自分なりの意思決定の軸というものを身につけていくことができます。
ケースの有用性
ケースのメリットについていくつか紹介したいと思います。
多様な情報から現状を把握する訓練
ケースは十数ページあることが多いです。これが1日複数ケースあると、かなりの情報に触れることになります。
これは将来マネジメント層になった時に起こりうる状況です。多様な部署から大量の情報が入ってくる中で、情報を取捨選択して、現状を把握する。ケースはこうした状況の予行演習になるでしょう。
ディスカッションの訓練
正解のない問いに対して、あーでもない、こーでもないとディスカッションするのは、ビジネスパーソンであれば毎日のようにやっていると思います。
これが毎日何回も、ダイバーシティの環境で起こります。相手から意見を引き出し、意見を戦わせ、説得する訓練になります。
クリエイティビティ
ありきたりの意見を言っても誰も響きません。しっかりと状況を把握した上で、人と違う意見を行ったり、創造的な解決策を考える訓練になります。
意思決定の訓練
ケースはシミュレーションなのですが、自分ならこうする!という意思決定が求められます。自分の決定を、意見+理由+具体例の3点セットで、的確に説明する訓練にもなりますね。
ケースの限界
とても効果の高いケースメソッドですが、当然限界もあります。
現実ではない
ケースはとても良い訓練の場ではありますが、本番ではありません。また、自分に知見のないケースでは、状況を想像するしかないので、リアリティに欠けます。
私はクラスで唯一の製造業出身なのですが、製造業のケースが出た時にこれを強く感じました。コストダウンプロジェクトを全社で展開しようとしている製造業のケースだったのですが、主人公が工場とのコミュニケーションが上手く取れていない状況でした。クラスメートは、これが悪い、こうしたら良いという、もっともらしい意見を言うのですが、全く私には響きませんでした(少しイライラしていました笑)。
現実には、普段から人間関係を築いた上で、工場に電話をかけ、何度も訪問し、説明をし、経営陣に出向いてもらい、飲みに行きながら、プロジェクトの意義や効果を説得すると言う、泥臭い生々しい作業があるのですが、そうしたことは経験がないとわかりません。
私はその時、こうした泥臭い現実を思い切り発言し、皆が耳を傾けてくれました。逆に言うと、ケースは現実ではないが、多様なクラスメートが経験を補い合うことで、学び合うことができます。
特に日本人は、日本の企業が出てきた時には、こうした役割を担うことを要求されます。
発言の機会は限られる
サッカーをイメージして欲しいのですが、90分のうち数分しかボールに触りません。
同じように授業時間の中で発言できる機会は、1〜数回でしょうか。Class Participationの評価が高い授業だと特に競争が激しく、発言の機会は限られてきます(ゼロの場合もあり)。
つまり、ケースは有用だが、自分が発言できる時間は限られていると言うのが限界です。
知識の伝達には向いていない
ケースはディスカッションで進んでいくため、知識伝達型の授業には向いていない場合があります。
もちろん教授もわかっているので、ケースと知識伝達系の授業を交互にやったり、知識を学ぶリーディング課題を出したり、問題を解かせたり、カバーをするように心掛けていると思います。
ケースは3周する
文字通り3周します。個人で考え、グループで議論し、最後にクラスで議論します。
個人で予習
まずは個人でケースを読み込みます。個人差があり、力の入れ具合にもよりますが、ケースあたり1〜数時間をかけて準備をします。
私の場合は、通常はGoogle翻訳に速攻かけます笑。なぜならば、日本語を読むスピードが英語の5〜10倍速いため、日本語→英語の順番だと相当効率よく読めるからです。
ケースを読むオーソドックスなやり方は以下でしょうか。
- 問題を確認する(通常、ケースには答えるべき問いが書かれています)
- 最初と最後のパラグラフを読む(話の内容をイメージする)
- 5W1Hを押さえる(状況把握)
- 表やグラフを見る
- ヘッドラインを流し読み
- 各パラグラフの最初のセンテンスを読む
- 問題を再度確認する
- じっくり読む
- 解決策(解答)を考える
私の場合は、図にまとめながら読むことが多かったです。
グループで予習
固定グループ(5〜7人)で毎朝ミーティングをすることが必須とされているので、ケースについてディスカッションすることが多かったです。状況の把握をグループで行い、各自の意見をシェアするイメージです。
グループで協力するとはいえ、授業では個人戦です。クラスでは発言時間が限られているので、こうした機会を利用するのも大切です。
授業でディスカッション
さて、本番です。特に、Participationが重要視される授業では、発言の機会を求めて争奪戦が起こると聞いたりしますが、IEはParticipationの比率が低い方なので、発言の機会は必ず訪れます。
手を挙げずに発言する奴、いいことを言う奴、大したことを言わない奴、冗談を言う奴など徐々にキャラが定まってきますが、私は基本的には手を挙げて発言、特に自分の経験から話せる時、日本の話題になった時は、しっかりと発言するようにしていました。
ケース攻略の5ステップ
5ステップに沿えば、準備は万端です。
①問題の特定
先ほど紹介したテクニックを使いながら、状況を把握し、問題を特定します。コツは、あるべき姿と現実のGAPを考えると上手くいくことが多いです。
②解決策を考える
解決策を思いつくままに挙げていきます。ユニークな解決策を考えられると良いです。
③複数の解決策を比較
各解決策のメリット/デメリット、リターン/リスク、費用対効果などをマトリックスの表にまとめていきましょう。
④意思決定
最終的には意思決定です。理由を3つほどでコンパクトにまとめられるとGood!です。ピラミッドストラクチャーを使うことが多いです。
Mission Driven Brand
⑤アクションプランを考える
必要に応じてアクションプラン、リスク回避策まで考えましょう。これは、教授やクラスメートからツッコミを受けた時をイメージし、打ち返せるようにできると良いです。
おわりに
かなり長々と紹介してきましたが、ケースは慣れです。必ず慣れ(=レベルアップ)します。最初は準備に時間がかかっても、徐々に鍛えられ、短時間で準備できるようになります。
実際にケースを読みながら、ケースの読み方を学ぶことができるシリーズ記事を執筆しました。日本語で気軽に読めますので、トライしてみてください。