今回の記事は、前回紹介した「ウォルマートのケース」を解説しています。
まだ過去の記事を読んでいない方は、Vol.1から必ず順番にお読みくださいね。
ケース解説
ケースはいかがでしたでしょうか。実際にケースを解説していきます。
(その前に)ケースで避けるべきこと
ケースはとても良い訓練の場ではありますが、本番ではありません。また、自分に知見のないケースでは、状況を想像するしかないので、リアリティに欠けます。ほとんどの人が表面をなぞるだけで学んだ気になってしまいます。それは絶対に避けるべきです。じゃあどうしたら良いのか、解決策は二つあると思います。
一つ目は、同級生や経験者から学ぶこと。クラスでのディスカッションは、考えを深めていくのにぴったりです。また、関連する資料や動画を自分で読んだり、詳しい人に話を聞くことも大切です。
二つ目は、MBAの授業でよく使われるような、シミュレーションゲームで学ぶことです。IEビジネススクールでも、各科目でシミュレーションゲームやボードゲームをたくさんやりました。
ケース課題の確認
ケースの課題を振り返ってみましょう。Walmartのケースを読んで、①〜⑤までの内容を考えることでしたね。
実際のケースの解き方
フレームワークを使いながら分析すると(実際にやってみてくださいね)、当業界は競争が激しく、儲けにくい業界だと(いう問題)がわかりますね。
Walmartが勝つためにはどんな選択肢があるのでしょうか?こちらもフレームワークを使って選択肢を洗い出しましょう。
Walmartが実際にやったように、コストで勝つ!というのが基本戦略になりますね。
コスト戦略をもとに、実際にどのような施策を打つべきなのか。ケースの中にも大量のヒントが隠されているので、何度も読みながら考えてみてくださいね。
追加のミニケース(15分で読んでみよう)
解説が終わったところですが、実際のMBAを体感してもらうために「追加のミニケース」を用意しました。ミニケースとは、15分程度で読める短いケースのことで、予習したケースの補完として授業内に配られたり、予習がない場合でも急に配られたりします。
予習ができないミニケースは、ノンネイティブにはきついです汗。今回は、先程のケースから少し時間が経った、2005年のWalmart CEOの悩みを見ていきましょう。
アマゾン・エフェクト(ミニケース)
CEOの悩み
2005年、ウォルマートCEOスコット氏は頭を悩ませていた。「ウォルマートは世界最大の小売企業になった(添付1: 2005年世界時価総額ランキングトップ10)。しかし、このままで良いのか。小売業界に新たな変革が起きている」。
市場環境
1950年は1.6億人ほどだった米国の人口は順調に伸び続け、2005年には3億人に迫っている(添付2: 米国の総人口と増加数、増加率の推移)。特に南西部の伸びは大きく、ヒスパニック系移民の増加が主な理由である。今後も、出生数の増加に加えて、医療水準の上昇による死亡数の減少を追い風に、人口増加は継続すると予想されている。
Amazon.comの創業
1995年7月、Amazonがオンライン書店としてのサービスを開始した(添付3: オープン当初のAmazon.com)。サービス開始後の最初の2か月で、Amazonはアメリカの50の州すべてと、世界の45か国以上で書籍を売り上げた。
Amazonが創業時に掲げたビジネスモデルは独創的なものだった。ベゾスは、開業当初の4-5年間では利益を挙げることはできないと予測していた。Amazonの株主は「ゆっくり」な成長速度に対して、もっと速く採算性を確保しなければ株主の投資を正当化することはできず、長期的には生き残ることすらできないだろうと不満を漏らした。
21世紀初頭のITバブル崩壊は、多くのIT企業を倒産に追い込んだが、Amazonは生き残り、IT不況を乗り越えて電子商取引における大手企業となった。2001年4Q、Amazonは開業以来初めて利益を計上した。10億米ドル以上の収益に対し、利益は500万米ドルとささやかだが、黒字への転換はベゾスの型破りなビジネスモデルが成功できることを示した。
米国EC市場
米国EC市場は、Amazonに牽引され、毎年15%の成長率で拡大している。2010年には1,700億ドルに到達し、小売市場に占めるECの割合は6.4%だった。これは5年ごとに市場規模が2倍になるペースでの拡大である。
アマゾン・エフェクト
アマゾン・エフェクトとは、ネットショッピング事業の大手である米Amazonの急成長・大躍進が市場に及ぼしている影響のことを指す。消費者のECへの移行がますます拡大していく中で、リアル店舗を持つ流通・小売業界の市場は急速に縮小し始めている。流通業界では、業績不振と株価低迷に陥り、結果的に閉鎖に追い込まれている企業も少なくない。Amazonの影響は、小売業だけに留まらない。
クラウドサービスのAWS事業が2004年に開始されたことで、大手を含め数多くの情報通信企業が大きな打撃を受けている。また、ネットショッピングに欠かせない運輸・運送業界にも大きな変革をもたらし始めている。Amazonの存在は、世界経済に大きな影響を与えており、経済動向すら変える力を持っている。ネット販売における市場競争が激化したことで、価格変更の頻度が増し、地域差のない価格の一定化も浸透している。
CEOの決断
スコット氏は一人つぶやいた。「ウォルマートの競争優位性は維持できるのか。維持するためにはどのような手を打てば良いのか。Amazonか、とても便利なサービスだ…」。
Appendix
1. 2005年世界時価総額ランキングトップ10
2. 米国の総人口と増加数、増加率の推移
3. オープン当初のAmazon.com
お疲れ様でした。これでミニケースは終わりです。授業で扱うケースは、(当然ながら)過去の出来事しか書かれていないので、自分でその後を考えてみることはとても大事ですね。
まとめ
3回にわたってケースの読み方、ケース実践、ケースの解き方を解説してきました。このシリーズを通して少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
他にも、独学でMBAが学べるコンテンツを紹介しています。